青い魔法に誘われて、深海への第一歩を
六月の大阪は、湿った重い毛布を全身に被せられたように、空気が肌にまとわりついていた。街全体がじっとりと濡れ、歩くたびに靴の底がアスファルトに吸い付くような不快感がある。けれど、ホテル ユニバーサル ポートの自動ドアを抜けた瞬間、肺の中の空気がふっと入れ替わった。ひんやりとした冷気と共に、澄んだ青色の気配が心地よく肌を撫でる。上の子が大切にしているぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、下の子が私の指を強く引いて、目の前に広がる深い青の世界へと吸い込まれていく。「見て!海の中みたい!」という歓声が、高い天井に心地よく反響した。それは、日常という名の窮屈な上着を脱ぎ捨てて、静寂の底へゆっくりと沈んでいくような、不思議な解放感だった。子供たちの瞳には、大人の私には見えない、もっと鮮やかで刺激的な「冒険の入り口」が映っていたに違いない。
珊瑚の森で繰り広げられる、小さな潜水艦の旅
ポート ディープ オーシャン フロアに足を踏み入れたとき、下の子が「あ!クラゲさんが踊ってる!」と弾んだ声を上げた。壁や天井に散りばめられた珊瑚や貝殻のモチーフが、淡い間接照明に照らされてゆらゆらと揺らめき、本当に海底の宮殿に迷い込んだような錯覚を覚えさせる。ミニオンルームのいたずらっぽい色彩に囲まれた空間は、たちまち私たち家族だけの「秘密基地」へと変わった。子供たちはふかふかのベッドを潜水艦に見立て、誰が一番先に未知の魚を見つけるかという競争を始めている。その弾むような笑い声を聞きながら、私はふと思う。家族旅行とは、予定通りに物事を進めることではなく、こういう「計画外の混乱」をどれだけ心から楽しめるかというチーム戦なのだと。不器用に組み合わさったパズルのピースのように、散らかった床さえも今は愛おしく感じられた。途中で「パパの靴下が片方ない!」と大騒ぎになり、全員で床を這いずり回って捜索するという、なんとも贅沢でくだらない時間を過ごした。結局、靴下は最初からパパのバッグの中にあったのだけれど、その無意味な時間こそが、この旅の最高のハイライトだったのかもしれない。
凪の時間、深い青に溶け込む「私」という空白
子供たちが深い眠りに落ち、部屋に本当の静寂が訪れる。さっきまでの喧騒が嘘のように、空間の密度がしっとりと変わり、心地よい静寂が満ちていく。私は窓辺に寄りかかり、外で降り続く雨の音に耳を澄ませた。ガラス越しに聞こえる雨音は、一定のリズムで刻まれる心地よいノイズとなり、私の意識をゆっくりと内側へ連れて行ってくれる。テーブルに置いた、地元で買ったたこ焼きの濃いソースの香りと、冷えた白ワインの鋭い酸味が、疲れた心に心地よく染み渡る。冷たいグラスの結露が指先に触れるたび、意識が鮮明に研ぎ澄まされていく。ここでは、誰かの母親である前に、ただの「私」に戻ることができる。深い青に包まれたこの部屋は、外界の喧騒を完全に遮断してくれる分厚い繭のようで、心地よい重みがあった。孤独とは寂しいことではなく、自分自身の周波数を調整するための、必要な空白のことなのだ。子供たちの規則正しい寝息をBGMに、私はただ、この静かな充足感に身を任せていた。明日になればまた、賑やかな「チーム」に戻るけれど、今のこの静寂があるからこそ、また明日も笑って彼らのわがままに付き合える気がする。
雨粒が窓を滑り落ちる速度を、ただぼんやりと眺めていた。
- 子供と一緒に、部屋の中の「海の生き物」を全部見つける探索ゲームをしてみてください。
- チェックアウト後、あえて雨の日のユニバーサル・スタジオ・ジャパンを散歩して、水たまりの反射を写真に撮るのがおすすめです。