← 戻る ホテルリゾーピア 熱海

午前2時の廊下に、誰かの笑い声だけが残っていた

朝のコーヒーは少し苦すぎたけれど、私たちはそれを全部飲み干した。白い磁器の底に、茶色の輪っかが静かに残っている。そんな、ちょっとしたズレがある旅が、結局一番記憶に残るのかもしれない。

私たちの「大失敗」を静かに見守っていた5つの目撃者

氷のバケツ:表面にびっしりとついた冷たい結露の感触と、中でカランと鳴る氷の乾いた音。エアコンの低い唸りが響く部屋で、「いや、地図はこっちだって!」と誰が読み間違えたかで30分間言い合いをした、あの不毛で最高に馬鹿げた時間を一番近くで見ていたはずだ。

ホテルのスリッパ:足に少し大きすぎる、ふわふわとした心地よい感触。深夜、誰が言い出したかもわからないコンビニへの密行作戦。廊下の薄暗い黄色い光の下、「お願い、フロントの人に見つからないで」と心の中で祈りながら、厚いカーペットに笑い声を吸い込まれつつ忍び足で歩いたあのリズムを覚えている。

バルコニーの手すり:五月の夜風に冷やされた金属の硬い質感。特別客室(温泉露天風呂テラス付)から眺める夜景に、遠くからバラと藤の花の香りが混ざって漂ってくる。誰が一番先に津山城の跡を見つけるかという、大人のすることとは思えない子供じみた賭けの静かな目撃者だ。

ルームキー:指先に触れる硬いプラスチックの無機質な感触。402号室か502号室かで迷い、結局違う部屋のドアにカードをかざして「ピッ」と冷たく拒絶されたときの、あの気まずい沈黙と、その直後に爆発した笑い声を共有している。

真っ白なデュベ:洗いたての石鹸の香りがする、心地よい重み。温泉に浸かって火照った肌に、ひんやりとしたシーツが心地よく馴染む。一日中歩き回って、足の指先まで疲れ切った私たちが、泥のように重なって眠りに落ちた瞬間の、あの絶対的な安心感を知っている。

もし、この部屋の壁が口を開いたなら

きっと彼らは、私たちのことを「騒々しいけれど、なんだか放っておけない不器用な集団」と評するだろう。ホテルリゾーピア 熱海の洗練された和風の空間に、私たちの不器用な笑い声や、くだらない言い争いが幾層にも塗り重ねられていく。それはまるで、何度も着て、何度も洗い直して、あちこちに小さなしわが寄ったリネンシャツのような関係だ。完璧にプレスされた正装ではないけれど、肌に触れた瞬間に「あ、これでいいんだ」と思える、あの絶対的な心地よさ。「誰が充電器を忘れるか」に賭けたけれど、結果的に全員が忘れていて、一つのコンセントを奪い合ったあの誇張しすぎない現実さえも、今となっては愛おしい。互いの欠落を埋めるのではなく、その隙間があるからこそ、そこに笑いが入り込む。そんな気がしてならない。

窓辺に置かれた飲みかけのグラスに、五月の柔らかな光が透けていた。

  • 鶴山公園で、風に揺れる藤の花の下をゆっくり歩いてみてほしい。
  • 津山の地酒を、あえてお気に入りのグラスに注いで、夜更かしして飲むのが正解。