← 戻る ホテルマイステイズ福岡天神南

濡れた靴底が、ホテルのタイルで鳴らした音

濡れた靴底が、ホテルのタイルで鳴らした音

湿った夜の境界線、二つの記憶

(友人Aの記憶)
天神南駅からホテルまで歩く、わずか三分の道のり。空から降り注いでいたのは雨というより、街全体を包み込む濃い霧のような湿度だった。傘を差していても、靴の裾はじっとりと重く、アスファルトからは濡れた土の匂いが立ち昇っている。ホテルマイステイズ福岡天神南の自動ドアが開いた瞬間、外のねっとりとした空気と、室内の冷たく乾いた空気がぶつかり合い、目に見えない境界線が引かれた気がした。チェックインを待つロビーで、濡れた靴底がタイルの上で「キュッ」と小さく鳴る。その孤独な音だけが、予定通りにいかなかった一日の不完全さを、心地よい余韻のように物語っていた。

(友人Bの記憶)
もう、本当にひどい雨だった。大濠公園で見たはずの紫陽花の色さえ忘れそうなほど、「誰が一番濡れたか」を競い合って笑い転げた、くだらない時間だけが鮮明に残っている。ホテルに飛び込んだとき、私たちは同時に「あー、生き返る!」と声を上げた。ロビーの冷房が、火照った肌に心地よく触れる。誰かが私たちの方向音痴ぶりに鋭いツッコミを入れ、また弾けるような笑いが起きた。エントランスに漂う、清潔なリネンのような香りが、張り詰めていた緊張をゆっくりとほどいてくれた。予定をすべてすっぽかしたけれど、結果的にそれが一番「私たちらしい」旅の形だったと思う。

湯気の向こう側、異なる味の記憶

(友人Aの記憶)
店に足を踏み入れた瞬間、ニンニクと白味噌の濃厚な香りが肺の奥まで満たした。もつ鍋から立ち昇る真っ白な湯気が、眼鏡を瞬時に曇らせ、視界を遮る。箸で持ち上げたもつは琥珀色に輝き、ぷりぷりとした弾力とともに、噛むたびに濃厚な脂の甘みが口の中で弾けた。そこに、シャキシャキとしたキャベツの瑞々しい食感が重なる。口の中が火傷しそうなほどの熱さだったが、それを止めることはできなかった。冷たい雨に打たれた身体が、切実に熱を求めていたからこそ、味覚が研ぎ澄まされていく感覚に酔いしれた。

(友人Bの記憶)
味よりも、あのテーブルの心地よい狭さが記憶に焼き付いている。もつ鍋の大きな鍋を囲み、お互いの肘がぶつかりそうになる距離。店内の喧騒と私たちの笑い声が混ざり合い、心地よいホワイトノイズとなって耳を包んでいた。誰かがビールをこぼしそうになって大騒ぎしたとき、私たちは食事をしていたのではなく、「一緒にいる」という贅沢な時間を消費していたのだと思う。もつ鍋の熱気で顔が真っ赤になり、鏡のような鍋の表面に映るお互いのひどい顔を見て笑い合った。あの温度感こそが、この旅の正解だったのだ。

唯一、心から同意した聖域

結局、この旅で全員が「最高だった」と認めたのは、ホテルに戻ってからの静寂だった。ホテルマイステイズ福岡天神南のスーペリアトリプルの部屋に入り、重い荷物を床に放り出した瞬間の、あの圧倒的な解放感。特に、リファのシャワーヘッドから出るきめ細やかなお湯が肌に触れたとき、雨で冷え切った身体の芯までゆっくりと熱が浸透していった。それは単なる洗浄ではなく、一日の疲れを丁寧に洗い流す儀式だった。ふかふかのベッドにダイブし、誰が先に寝落ちするかという賭けを始めた。三人には少し狭い空間が、かえって心地よい繭のような密室感を作り出していた。

窓の外で遠くに鳴る車のクラクションが、子守唄のような低周波となって部屋に溶け込んでいた。

  • 天神南駅から徒歩三分という近さを活かし、あえて傘を捨てて全力で走る贅沢を。
  • リファのドライヤーで髪を乾かしながら、明日どこで迷子になるかを語り合う時間を。