空間の距離感
冷たい窓ガラスに指先を押し当てると、外の空気が冷たさを返してきた。箱根 ゆとわ (Hakone Yutowa)のスタンダードツインルームは、ベッドが窓際にあって、そこから見える夜景は明星ヶ岳の灯りが小さな星のように並んでいる。ソファは壁際に置かれていて、温泉から上がった足で座ると、カーペットの厚みが足の疲れを吸い取ってくれる。バスルームの鏡の前に置かれた化粧水の瓶は半分使い切ったところ。片方が使っている間、もう片方は窓の外を眺めながら、外の空気が部屋に入ってくるのを待っている。言葉にならない理解
朝食のブッフェテーブルで、二人同時に同じ料理を手に取った瞬間があった。季節のデザート、梅の砂糖漬け。ピンクがかった白い結晶が、フォークにのせられたところで互いの目が合った。何も言わなくても、その甘さがこの時期だからこそ許される特別な甘さだとわかった。温泉から上がった後、同じタオルで互いの背中を拭いた。タオルが乾いていて、少しザラつく感触が、触れ合う部分の温かさと対比していた。その時、節分の豆まきの音がホールから聞こえてきて、誰かが掛け声をあげる声が混ざった。互いの目が合い、小さく笑った。言葉にしなくても、その時何を感じていたかが伝わった。
図書館ラウンジで、同時に本を閉じた。同じ本棚の前で、違う本を手に取っていたけれど、ページをめくる音が同じリズムで重なった。気がつけば、どちらからともなく同じ方向を見ていた。
別々の静けさ
一方でメモを取っていた。隣で横になったまま、相手の呼吸を聞いている。メモの内容は、明日の散歩コースと、レストランのブッフェで気に入った料理の名前。書きながら、時折相手のペンの音が止まるのを聞いて、顔を上げると窓の外がうっすらと明るくなり始めていた。図書館ラウンジで、それぞれ違う本を読みながらも、同じ空間にいる安心感。片方は写真集を、もう片方は小説を。時折、ページをめくる音が重なる。本の表紙の色合いが、この季節の梅の花の淡いピンクに似ていた。
夜、ベッドで横になったまま、互いの呼吸を聞いている。外の空気は乾いていて、部屋の中の湯気が少しずつ消えていく。その時、外で誰かが小さな声で話しているのが聞こえた。ホテルのスタッフか、それとも他の客か。どちらでもよかった。この空間にいる誰かの、日常の一コマのような気がした。
明かりを消した部屋で、窓の向こうの星が揺れていた。
- 2月の箱根ゆとわで、梅まつりの時期に合わせて早朝散歩を
- 節分の豆まきイベントに参加して、カップルで一締めに福を招く