凛とした朝気と、半分こにしたメロンの甘い記憶
指先に触れるシーツが、心地よくひんやりとしていた。5月のトマムの朝は、まだ冬の吐息が残っている。室温は適切に保たれているが、グランピングステイトマム GLAMPING STAY TOMAMUのドームテントのジッパーをゆっくりと開けた瞬間、肺の奥まで洗われるような鋭く澄んだ空気が流れ込んできた。時計は午前7時。まだ一杯のコーヒーさえ飲み干していない私の耳に飛び込んできたのは、「早く起きて!」と下の子のパジャマの裾を引っ張る上の子の、賑やかすぎる叫び声だった。
天井の高いドームの中には、朝陽が白い布地を透かして、部屋全体を淡いベージュ色の光で満たしている。まるで大きな繭に包まれているような安心感。子供たちは、用意されたフルーツに夢中だ。半分に割ったメロンの濃厚な甘い香りが、冷たい空気と混ざり合い、鼻腔をくすぐる。下の子がメロンを頬張りすぎて、口の周りがオレンジ色に染まっている。それを隣で見ていた上の子が、くすくすと笑いながら小さな指で拭ってあげていた。
正直に言えば、私は静寂を求めていたのかもしれない。けれど、この不揃いな騒がしさは、家族というチームが奏でる心地よいリズムだ。誰かが何かをこぼし、誰かがそれを笑い、また誰かが泣き出す。そんな予測不能な展開こそが、旅の醍醐味なのだ。完璧な静寂よりも、この賑やかな笑い声の方が、今の私にはずっとしっくりきている。
新緑の芳香と、ウッドデッキで味わうおにぎりの贅沢
足の裏に伝わるウッドデッキの感触は、少しだけざらついていて、歩くたびに乾いた音が小さく鳴る。外に出ると、視界いっぱいに暴力的なまでの鮮やかな新緑が広がっていた。5月の占冠村は、世界が塗り替えられたばかりのような、生命力に満ちた緑の海だ。道端に咲く藤の花が、風に揺れて淡い紫色の香りを運んでくる。その甘く切ない香りを深く吸い込んだ瞬間、強張っていた肩の力がふっと抜け、呼吸が深くなるのを感じた。
昼食は、あえて凝ったことはしなかった。近くで買ったコンビニのおにぎりと、地元の小さなお菓子。それを、大パノラマビューが広がるテント前のデッキに座って、家族で囲んだ。上の子が「この雲、大きな犬みたい!」と指をさし、下の子がそれに合わせて「ワンワン!」と無邪気に叫ぶ。私はそれを眺めながら、少しだけ形が崩れた鮭おにぎりを口に運んだ。高級なレストランのコース料理よりも、風が通り抜け、鳥の声がBGMになるこの不便な場所で食べるおにぎりの方が、ずっと鮮烈に記憶に刻まれる気がする。
旅とは、計画通りに進まないことの連続だ。下の子が急に「歩きたくない」と言い出し、結局抱っこして歩くことになったり、上の子が道端の石ころに夢中になってスケジュールが完全に崩壊したり。でも、その「崩壊」こそが、実は旅のメインディッシュなのだ。私たちは効率的に観光地を回る機械ではない。ただ一緒にいて、一緒に迷い、一緒に笑う。その不器用なプロセスこそが、家族というパズルを完成させる最後のピースなのだろう。
炭火の爆ぜる音と、星空に溶ける小さな重み
夜になると、空気は一気に冷え込み、肌を刺すような寒さに思わず肩をすくめた。けれど、目の前のプライベートBBQスペースで真っ赤に燃える炭火は、心地よい熱を放っている。北海道産和牛を網に乗せた瞬間、「ジューッ」という激しい音が響き、香ばしい脂の香りが夜風に舞った。肉の表面がカリッと焼け、中はふっくらとしたピンク色に染まる。それを一口頬張ったとき、口いっぱいに広がる濃厚な旨味に、今日一日の心地よい疲れが、雪解けのようにふっと溶けていく感覚があった。
子供たちは、食事よりも火の粉が舞う様子に心を奪われていた。炭がパチパチとはぜるたびに、「見て!花火みたい!」とはしゃぐ声が夜の静寂に溶けていく。けれど、心地よい疲労感は残酷なほど早く彼らを襲う。食事の終盤、下の子が私の肩に頭を乗せ、規則正しい寝息を立て始めた。その小さな頭の重みが、心地よく肩に食い込む。上の子も、いつの間にかウトウトとして、私の腕の中で穏やかな夢を見ているようだった。
子供たちが眠りについた後の、贅沢な静寂。夫と二人で、残ったワインをゆっくりと傾ける。遠くで風が木々を揺らす音が聞こえ、空には都会では決して見ることのできない、刺すような星たちが散りばめられていた。グランピングステイトマム GLAMPING STAY TOMAMUの夜は、深く、静かだ。管理棟のバスルームで温かいお湯に浸かり、そのまま大きなベッドに潜り込む。リネンが肌に触れる心地よさと、隣で眠る子供たちの温もり。私たちは特別な答えを探していたわけではない。ただ、この不完全で騒がしく、けれど限りなく温かい時間を共有したかっただけなのだ。
明日もきっと、誰かが何かをこぼして、私たちはそれを笑い合うだろう。
- 地元の乳製品を使った濃厚なアイスクリームを、ぜひ夜の星空の下で味わってみて。
- 管理棟(ロッジ・アスペン)までの往復の歩数を、子供たちと競い合って歩くのもおすすめ。