← 戻る ソラリア西鉄ホテル札幌

温かいタオルの匂いと、小さな手のひら

視線の高さが変える、秘密基地への招待状

外の空気は、もう冬の入り口に立っているようだった。札幌駅南口からホテルまで歩くわずか5分。10月の風は薄いガラスのように鋭く、鼻の奥がツンと凍える。上の子は「寒い!」と何度も言いながら私のコートの裾をぎゅっと掴み、下の子は短い足で必死に追いかけてくる。そんな、少しだけ「兵荒馬乱」な状態でソラリア西鉄ホテル札幌のドアを開けた瞬間、世界の色と温度がふわりと変わった。

下の子が真っ先に反応したのは、ロビーの天井の高さだったと思う。彼にとって、ここは単なるホテルのエントランスではなく、巨大な秘密基地か、あるいはどこかの城に迷い込んだ感覚だったのかもしれない。大人がチェックインの手続きに追われている間、彼はピカピカに磨かれた床に反射する自分の顔をじっと見つめていた。大人の視界には決して入らない、足元の小さな宇宙。スーツケースが床を転がる「ゴロゴロ」という乾いた音が、静かな空間に心地よく響いている。その音さえも、彼にとってはこれから始まる大冒険の合図のように聞こえたはずだ。

木の香りに包まれた、小さな冒険者の地図

案内されたのは「ロッジダブル」の部屋だった。ドアを開けた瞬間、ふわりと漂う深い木の香りが、外の冷たさを完全に遮断してくれる。ここにあるのは、洗練された都会的な空間というより、森の中の隠れ家に迷い込んだような、どこか懐かしく温かい質感だ。下の子は、部屋に入った途端に靴を脱ぎ捨て、ふかふかのカーペットの上にダイブした。彼にとって、この絨毯はきっと、深い森に広がる柔らかな苔か、あるいは空に浮かぶ雲の上のように感じられたのだろう。

「見て!ここ、お山みたい!」

上の子は、ロッジ風の家具の角や、節のある木の質感に興味津々だった。彼らは大人が「機能的だね」と感じるスペースを、「冒険のルート」として再定義する。ベッドの端から端までをどうやって最短距離で移動するか、あるいはカーテンの裏にどうやって隠れるか。彼らの世界では、日常の家具がすべて遊び道具に変わる。そんな賑やかな混乱の中で、ふと笑いが起きたのは、下の子が大人用のバスローブを借りて羽織ってみたときだ。サイズがあまりに大きすぎて、裾を思い切り踏み抜き、そのままゆっくりと、スローモーションのように転がった。本人は驚いた顔をしていたけれど、その姿があまりに滑稽で、私たちは同時に吹き出した。完璧な家族旅行なんてないけれど、こういう「予定外の転倒」こそが、後で一番思い出す記憶になるのかもしれない。

翌朝のレストランでの時間も、また別の物語だった。北海道ならではのバターの濃厚な香りと、白い湯気を立てて誘うスープ。上の子は「全部食べたい」と皿いっぱいに料理を盛り付け、下の子はパンケーキのシロップがテーブルに垂れたことに大騒ぎしていた。周りの視線が少し気になるけれど、それさえも「チーム戦」のような連帯感に変わる。北海道のジャガイモのホクホクした食感、冷たい牛乳の喉越し。それらが、家族という小さな集団の胃袋を満たしていく。賑やかすぎる食卓だけれど、その喧騒こそが、今の私たちにとっての正解なのだと感じた。

静寂の湯に溶け出す、大人のための休息時間

子供たちが深い眠りに落ち、部屋に本当の静寂が訪れる。さっきまで戦場のように散らかっていた床に、脱ぎ捨てられた靴下や、読みかけの絵本が点在している。その光景を見ながら、私はようやく「大人」としての呼吸を取り戻す。誰かのペースに合わせるのではなく、自分のリズムで空気を吸い込む時間。

地下にある大浴場へ向かう。裸足で踏むタイルのひんやりとした温度が、心地よく意識を覚醒させる。お湯に身を沈めると、今日一日、子供たちを追いかけ回して緊張していた肩の力が、ゆっくりと、本当にゆっくりと抜けていく。お湯の重みが、皮膚を通して内側にある疲れを優しく押し出してくれる感覚。ソラリア西鉄ホテル札幌のこの静かな空間では、誰の母親でも、誰の妻でもなく、ただの「私」に戻れる。水面に反射する光を眺めていると、孤独というのは寂しいことではなく、自分という器を整えるための大切な時間なのだという気がしてくる。

部屋に戻り、窓の外に目を向ける。そこには北海道庁旧本庁舎の赤レンガが見えた。夜の帳が降りた街に、温かいオレンジ色の灯りが灯っている。その色合いが、今の自分の内側の温度とちょうど同じくらいに感じられた。もしかしたら、旅の本当の目的は、どこか遠くへ行くことではなく、こうして「自分たちが今ここにいる」という感覚を、静かに確認することにあるのかもしれない。シーツのパリッとした質感に体を預け、心地よい重みに包まれる。明日はまた、賑やかで、混沌とした、愛おしい一日が始まる。でも今は、この静寂という贅沢を、ゆっくりと味わっていたい。

明日もきっと、誰かが靴下を片方失くして、みんなでそれを探す時間があるだろう。

  • 子供と一緒に、ロビーの大きな鏡で「変な顔コンテスト」をしてみてください。緊張がほぐれて、旅の始まりが楽しくなります。
  • 朝食後は、ホテルからすぐの赤レンガ庁舎の庭園を散歩して、10月の冷たい空気の中で深呼吸することをおすすめします。