← 戻る ホテルリソル トリニティ札幌

濡れた靴を脱いだ瞬間の、あの軽さ

濡れた靴を脱いだ瞬間の、あの軽さ

冷たい雨に濡れたウールのコートから、湿った土と冬の匂いが漂う。表面張力で丸まった小さな水滴が、ロビーの温かい空気に触れて、ゆっくりと形を崩していく。下の子が、自分の足よりずっと大きなブーツを脱ぎ捨てたとき、床に鈍い音が響き、それまでの旅の緊張がふっとほどけた気がした。靴下だけになった小さな足で、温かい床をパタパタと走る。その軽やかなリズムが、外の冷たい風で強張っていた私たちの心を、春の雪解けのように柔らかく解きほぐしていく。


ホテルリソルトリニティ札幌の大浴場に体を沈めると、肌と水の境界線が心地よく消えていく。11月の鋭い冷気にさらされていた肩の力が、お湯の柔らかな圧力に押し出されるように抜けていった。上の子は、水面を手のひらで叩いては小さな波紋を広げることに夢中になっている。私はただ、浮力に身を任せて、自分の体重がどこまで軽くなれるかを確かめていた。立ち上る白い湯気で視界が淡く滲み、隣で小さく笑う家族の輪郭が、水彩画のように優しく溶け合っていた。
和洋室の静寂の中に、布団を広げるカサカサという乾いた音が心地よく響く。誰がどこで寝るかという、子供たちにとっての重大な交渉が始まった。布団の端を引っ張り合い、部屋の中に小さな混乱の渦ができる。もともと家族というものは、完璧な調和よりも、こうした賑やかな不協和音のほうがずっと自然なのかもしれない。けれど、その騒がしさが愛おしいのは、ここが完全に閉じられた、私たちだけの安全な器のような空間だからだという気がした。
朝食のビュッフェで、味噌汁から立ち上る白い湯気が、眼鏡のレンズをゆっくりと曇らせる。北海道の大地が育んだ野菜の、土の香りが混じったような深い甘みが、舌の上で静かに広がった。下の子が、皿の上に山盛りにした卵料理を誇らしげに見せてくる。完璧な盛り付けではないけれど、その不格好な山が、なんだかとても愛おしく見えた。温かい食事が胃に落ちていくたびに、体温が内側からゆっくりと上昇し、心まで満たされていくのが分かった。
窓の外、大通公園の街灯が、濡れたアスファルトの上に長い光の尾を引いている。雨上がりの夜の札幌は、光が液体のように地面に溶け出し、街全体が大きな鏡になったみたいだ。子供たちが窓ガラスに顔を押し付け、外の世界を眺めている。ガラスに触れた吐息が白い霧になり、彼らの小さな指で、そこに意味のない線が描かれる。その線がゆっくりと滴り落ちる様子を、私たちはしばらくの間、静かな充足感の中で眺めていた。
ベッドのシーツに触れると、ピンと張った清潔な布のひんやりとした温度が、指先から伝わってくる。重めの掛け布団に潜り込んだとき、心地よい圧迫感が全身を包み込んだ。それは、誰かに強く抱きしめられているような、あるいは深い海の底で守られているような安心感だった。上の子が、パジャマの袖をひらひらさせて「ここ、雲の上みたい」と小さく呟く。その言葉が、部屋の空気に静かに溶けて、心地よい眠りへと私たちを誘っていく。
深夜、全員の寝息が重なり合い、部屋の中が一定のリズムで満たされる。誰が誰の足に触れているのかも分からないほど、私たちは密接に、けれど静かに横たわっていた。一人で旅をする寂しさとは違う、誰かと一緒にいることで完成する、ある種の孤独のような心地よさ。明日になればまた、靴を履いて、冷たい外気の中へ飛び出していく。けれど今は、この温かい流れの中に、ただ身を任せていたいと思った。

濡れた靴を脱いだ足先から、ゆっくりと体温が戻ってくる夜。

  • 子供と一緒に大通公園を散歩して、濡れた地面に映る街の灯りを探してみるのがおすすめ。
  • 和洋室を選んで、家族全員で布団に潜り込み、語り合う時間を大切にしてみてほしい。