← 戻る ラビスタ富良野ヒルズ

真っ白な息が、誰かの笑い声に溶けていくとき

真っ白な息が、誰かの笑い声に溶けていくとき

私たちの「迷走」を静かに見守っていた5つのもの

プラスチックのルームキー:指先に張り付くような冷たさと、カチリと鳴る乾いた音。誰が一番に大浴場に辿り着くかという、大人の余裕を完全に捨て去った全力疾走の時間を記憶している。

無料のアイスクリームカップ:舌の上でとろける濃厚な甘さと、芯まで凍える冷たさ。氷点下の外気と、この冷たさのどちらがより「冬らしいか」という、答えのない不毛な議論を静かに聞いていた。

もこもこしたホテルローブ:肌を包み込むずっしりとした重みと、洗いたての清潔な香り。深夜3時、誰からともなく始まった「人生の正解」についての、答えの出ない深い会話をすべて優しく包み込んでいた。

結露した窓ガラス:指でなぞるとひんやりと濡れる感触。十勝岳の絶景を完璧に切り取ろうとして、結局ピントが合わずに笑い転げた、私たちの不器用な構図をぼんやりと映し出していた。

深夜のラーメン鉢:立ち上る真っ白な湯気と、食欲をそそる醤油の香り。陶器の温もりに手を添えながら、「ダイエットは明日から」という、旅先でだけ許される心地よい嘘を、温かいスープと一緒に飲み込んでくれた。

もし、この部屋の壁が口をきけたなら

彼らはきっと、私たちのことを「賑やかな迷子たち」と呼ぶだろう。ラビスタ富良野ヒルズという静謐な器の中に、私たちはあまりにも不揃いで、けれど純粋な感情を詰め込みすぎた。デラックスツインの広々とした空間に、脱ぎ散らかした靴下と、誰のものか分からないお菓子の袋が散らばっている。でも、それでいい。冬の光が雪の結晶に当たってプリズムのように分かれるように、私たちの笑い声も、ふとした瞬間のため息も、ここではすべてが心地よい色彩に変わる気がした。

富良野駅から歩いてわずか3分。外は肌を刺すような鋭い寒さなのに、ホテルに足を踏み入れた瞬間に触れる空気の温度が、まるで古い友人に抱きしめられたような安心感を与えてくれる。最上階の「紫雲の湯」に身を委ねているとき、視界に飛び込んでくる山々の稜線は、真っ白なインクで描かれた精密な地図のように見えた。お湯の温度がちょうどよく、凝り固まった肩の力が、春を待つ雪が溶けるようにゆっくりと抜けていく。信じられないだろうけど、私たちはそこで、「誰が一番長く潜っていられるか」という、小学生のような賭けに興じていた。

ふと耳を澄ませると、ホテルの目の前にある貨物駅から、コンテナがぶつかり合う鈍い金属音が聞こえてくる。リゾートの贅沢な静寂と、日常の労働が刻むリズムが共存している。その不協和音さえも、今の私たちには心地よいBGMに聞こえた。「ここ、なんか不思議な場所だね」と誰かが呟いたとき、私たちは同時に、飾らない今の自分たちのままでここにいていいのだと、深く納得した。

翌朝の朝食バイキングでは、地元産の鮮やかな野菜が並ぶテーブルを囲みながら、私たちは次の行き先を決めずにただ笑っていた。予定を詰め込まないという、大人の贅沢。それは、自分たちが何に惹かれ、何に心地よさを感じるかを、ゆっくりと確かめる時間だった。2月の富良野は凍えるほど冷たいけれど、この場所で過ごした時間は、心の中に消えない小さな灯りをともしてくれた。結局、一番鮮やかな思い出は、計画していた観光地ではなく、ホテルの廊下で誰かが派手に転びそうになった瞬間や、深夜に啜ったラーメンの味だった。

オレンジ色のロビーの灯りが、静まり返った雪原の上に長く伸びていた。

  • 最上階の温泉から十勝岳を眺めた後、あえて冷たい空気に触れてから無料アイスを食べる贅沢を。
  • 貨物駅のコンテナが動く音をBGMに、あえて目的地を決めない冬の散歩に出かけてみて。