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まぶたの裏に残った、白い残像

まぶたの裏に残った、白い残像

青い冷気と、オレンジ色の境界線

鼻の奥がツンとするような、鋭い冷気。1月の札幌駅北口を出た瞬間、肺の中まで凍りつくような感覚に襲われた。足元の雪が、歩くたびにギュッ、ギュッと小さく鳴る。その音だけが、この静まり返った白い世界で唯一の確かなリズムだった。重いスーツケースのキャスターが雪に足を取られ、少しだけバランスを崩す。隣を歩く君が、何も言わずに私の肩に手を添えた。その手のひらの温度が、厚いコート越しにかすかに伝わってきて、なんだか少しだけ安心した。けれど、外の世界は容赦なく青い。空も、街も、すべてが凍りついたまま停止しているように見えた。

そんなとき、視界に飛び込んできたのが、京急 EXホテル 札幌の入り口だった。駅から歩いて、たった1分。その短い距離が、今の私たちには果てしなく長い旅路のように感じられたかもしれない。自動ドアが開いた瞬間、外の冷たい風が遮断され、代わりにふわりと温かな空気が肌を包み込んだ。視界の色が、一瞬で青から柔らかなオレンジ色へと塗り替えられる。それは、凍えていた心まで溶かしてくれるような、優しい光の粒子だった。私たちは、どちらからともなく小さく笑い合った。ただ、暖かい場所に辿り着いたという、根源的な喜びだけがそこにあった。


湯気の向こう側にあった静寂

ロビーに足を踏み入れると、そこには驚くほど開放的な空間が広がっていた。天井が高く、光がたっぷりと降り注いでいる。私たちは、ウェルカムコーヒーを一杯ずつ手に取り、ラウンジの心地よい椅子に身を沈めた。カップから立ち上る白い湯気が、ゆっくりと空気に溶けていく。その不規則な曲線を見つめていると、外の厳しい雪景色が、まるで遠い国の出来事のように感じられた。もしかすると、私たちはこの温もりに甘えて、もう外に出たくないと思っているのかもしれない。

隣に座る君と、特に深い話をしたわけではない。ただ、ギャラリーのような静かな空間で、同じ光を眺めていた。言葉にする必要がない時間は、寂しさではなく、ある種の贅沢な共有なのだという気がする。コーヒーの苦味がゆっくりと喉を通るたびに、強張っていた肩の力が抜けていく。ここでは、急ぐ必要なんてどこにもない。ただ、この心地よい温度に身を任せて、お互いの存在を静かに確認し合う。そんな、名もなき時間が、何よりも贅沢な旅の記憶になるのかもしれないと感じた。


部屋という名の、小さな避難所

部屋に入り、重いコートと、雪を吸ってしっとりとした靴を脱ぎ捨てる。スーペリアダブルAの部屋に足を踏み入れたとき、まず目に飛び込んできたのは、窓際に置かれたソファーだった。私たちは、吸い寄せられるようにそこに深く沈み込んだ。生地の少しざらついた感触が、冬の肌に心地よく馴染む。ベッドまであと数歩という距離にあるけれど、あえてそこには行かず、このソファーで、もどかしいくらいの距離感を保ったまま寄り添っていた。

外ではきっと、また新しい雪が降り始めているはずだ。窓の外は深い夜の青に包まれているけれど、部屋の中にはヒーターの低い唸り声と、お互いの静かな呼吸だけが満ちている。私たちは、もともと計画していた観光ルートのことよりも、今この瞬間の静寂について話し始めた。どこへ行くかよりも、誰とどこにいるか。そんな、当たり前すぎて普段は意識もしないことが、この閉ざされた温かな空間では、とても大切なことに思えた。君の肩に頭を預けると、かすかにシャンプーの香りがして、心臓の鼓動がゆっくりと同期していくのがわかった。ここは、世界から切り離された、私たちだけの小さな避難所だった。


窓ガラスの冷たさと、体温の輪郭

ふとした拍子に、指先で窓ガラスに触れてみた。指先から伝わってくるのは、突き刺さるような冷たさ。でも、その冷たさがあるからこそ、隣にいる人の体温が、より鮮明な輪郭を持って感じられた。冷たいものがあるから、温かいものが温かいと感じられる。人生の心地よさというのは、きっとそういう対比の中にしかないのかもしれない。私たちは、明日行く初詣の場所を、あえて決めないままにしていた。どこへ辿り着くかよりも、一緒に迷いながら歩くプロセスそのものを楽しみたいと思ったから。

まぶたを閉じると、昼間に見た真っ白な雪景色が、オレンジ色の光と混ざり合って、不思議な残像となって残っていた。それは、心地よい疲労感と、満たされた孤独が混ざり合ったような、名付けようのない感情だった。空白の時間があることは、決して欠落ではない。むしろ、そこに何を書き込むかを自由に決められる、贅沢な余白なのだと思う。私たちは、ゆっくりと呼吸を合わせ、深い眠りへと落ちていった。明日、目が覚めたとき、また外は白い世界に包まれているだろうけれど、今の私たちには、それを一緒に眺めるための十分な温度が備わっているはずだ。

まぶたの裏に焼き付いた白い光が、ゆっくりと、温かな色に溶けていく。


  • 札幌駅北口から徒歩1分という距離を最大限に活かし、あえて計画を立てずに、その日の気分で街へ繰り出す贅沢を。
  • スーペリアダブルAのソファーで、温かい飲み物を片手に、あえて「何もしない時間」を二人で共有してみてください。