冬の記憶を奏でる、家族の五つの音
「タッタッタッ」と、地下歩行空間のタイルに弾む小さな靴音。下の子が先を急ぎ、上の子がそれに追いつこうと必死に走る。外の凍てつく風から逃れ、札幌グランドホテルへと向かうこの道は、私たちにとって温かな繭のような安全地帯だった。冷え切った指先が、地下のぬるい空気に触れてじわりと解けていく感覚に、旅の緊張が心地よい期待感へと溶け出していくのがわかった。
重い扉が「ゴトン」と閉まる、深く、鈍い音。その瞬間、外の世界の喧騒と刺すような寒さが完全に遮断され、家族だけの小さな泡に包まれたような静寂が訪れた。ロビーに満ちている黄金色の光が、窓の霜に反射してプリズムのように揺れている。その柔らかな光の粒が、親としての疲れを優しくぼかし、「心地よい疲労」という贅沢な感情に書き換えてくれた。ここでは、急がなくていいのだと、静謐な空気が教えてくれた。
朝食バイキングで、小さなフォークが皿に当たる「チリン」という高い音。下の子が「見て!これすごい!」と歓声を上げ、上の子が呆れたように、けれど嬉しそうに笑う。出汁の香りがふわりと漂う和食のコーナーで、皿を運ぶのに必死な賑やかな作戦会議のような時間。温かい茶碗蒸しの湯気が鼻をくすぐり、家族全員の表情が春のように緩む。その温度こそが、この旅で一番欲しかったものだったのかもしれない。
部屋に戻り、暖房器具が低く、一定のリズムで鳴らす「ブーン」という振動音。それはまるで、冷え切った身体をゆっくりと包み込む巨大なカシミアの毛布のような響きだった。外での戦いを終えて重いコートを脱ぎ捨てたとき、身体から寒さという名の重荷が消えていく。下の子がホテルの大きすぎるバスローブをマントのように羽織って、廊下をヒーローのように駆け回る不格好な姿に、溜まっていた疲れが笑いとなってこぼれた。
パリッとしたリネンのシーツが擦れる「カサッ」という音と、それに重なる私の深い溜息。全員がベッドに倒れ込んだ瞬間、部屋の中を支配したのは、完全な充足感という名の静寂だった。誰かが心地よい寝息を立て始め、夜の静けさがゆっくりと部屋の隅々まで満たしていく。明日もまた、あの白い街へ出かけよう。そう思えるのは、札幌グランドホテルという場所が、私たちをそのまま受け入れてくれる大きな器だったからだ。
窓の外で静かに降り積もる雪を眺めながら、温かいココアを飲み干す。
- 地下歩行空間からホテルに直結しているため、小さなお子様連れでも濡れずに移動でき、冬の札幌観光に最適です。
- 朝食の和食は盛り付けが非常に丁寧で、子供たちも落ち着いてゆっくりと味わうことができ、心温まる時間になります。