ラフォーレ伊東温泉 湯の庭

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1月 friends U
30

湯気の中で、誰かが笑っていた

スーツケースのキャスターが、ロビーの磨き上げられたタイルの継ぎ目にガツンと激突した。静まり返った空間に響き渡る鈍い音。誰が一番先にドジを踏むか密かに賭けていたけれど、結果的に私の完敗だった。周囲の視線よりも、隣で「ぷふっ」と吹き出した友人の…

2月 family U
16

冷たい指先が、お湯に溶けていく時間

指先に触れる風は、薄い氷の膜のように鋭く、肌を刺す。二月の伊東の街は、まだ冬の深い眠りから覚めきっていない。ふと見上げると、早咲きの梅が凛として咲き始めており、潮の香りに混じって、かすかに甘く、けれど芯のある芳香が鼻をくすぐった。隣では長男…

4月 family U
21

小さな手のひらに、春の風が残っていた

四月の伊東は、肌を刺すような冷たさと、頬を撫でる日差しの柔らかさが奇妙に同居している。指先に触れる風はまだ冬の名残を運んでくるけれど、視界に飛び込んでくる桜は、もう完全に春の色に染まっていた。潮の香りが混じった春風が吹くたび、隣を歩く老二が…

4月 friends U
27

濡れたタオルの端に、春の匂いがついていた

(Aの記憶) 目覚めると、障子越しに淡いグレーの光が部屋に満ちていた。足先が畳に触れた瞬間、ひんやりとしたい草の乾いた香りが鼻をくすぐり、意識がゆっくりと覚醒していく。私たちが泊まったのは温泉付和洋室で、伝統的な和の静寂と、現代的なベッドの…

5月 couple U
40

畳の上で、指先が触れるまでの距離

扉を開けた瞬間、新調されたばかりのい草が放つ、青く瑞々しい香りが鼻腔をくすぐった。空調の冷気が肌を撫でる一方で、足裏に触れる畳の質感はどこか懐かしく、体温をゆっくりと吸い取っていく。ラフォーレ伊東温泉 湯の庭の「ベッドスタイルの和室」は、伝…

7月 family U
18

花火の音が、少しだけ遅れて届いた夜

糊のきいた浴衣の帯 7月の湿った空気が肌にまとわりつく午後。次男が「お腹が苦しい」とぐずり始め、帯を締め直すたびに、綿の生地が擦れるカサカサという乾いた音が静かな部屋に響いた。新調した浴衣の、少しツンとする糊の香りが鼻をくすぐる。結局、長女…

7月 friends U
12

浴衣の帯が解けていた、あの夜のこと

肌にまとわりつく7月の重い湿気が、ロビーに入った瞬間に凛とした冷気へと塗り替えられる。その急激な温度差に、旅の緊張で張り詰めていた肩の力がふっと抜けた。床を転がるキャリーケースの不規則なリズムが、高い天井に反響して、まるで賑やかなオーケスト…

8月 couple U
13

花火の音が、少しだけ遅れて届いた夜

「ここであってるかな」 君が不安げに呟く。 「たぶん。でも、さっきと同じ角を曲がった気がする」 私が答えると、君は小さく笑った。浴衣の襟元が夜の湿気を吸ってじっとりと肌に張り付き、呼吸するたびに衣擦れの音が静寂に溶けていく。遠くで鳴り響く花…

10月 couple U
17

冷めていくお茶と、触れない指先の温度

チェックインを済ませ、旅の緊張が心地よい疲労に変わった頃、最初に口にしたのは地元の金目鯛の煮付けだった。重厚な陶器の器から立ち上る真っ白な湯気が、眼鏡の端をふわりと曇らせる。箸を差し入れると、驚くほど柔らかい身が静かに解け、醤油と砂糖がじっ…

10月 family U
27

濡れた足跡が、畳の上でゆっくり消えていった

鼻腔をくすぐる、少し焦げた醤油の香ばしさと、深く澄んだ出汁の温かい匂い。それが、心地よいまどろみを切り裂き、意識を覚醒させる最初のスイッチになる。ラフォーレ伊東温泉 湯の庭の朝は、家族という名の心地よい不協和音から始まる。隣の席では子供たち…

12月 couple U
43

指先が触れたとき、冬の空気が少しだけ軽くなった気がした

ウールのコートに張り付いた冬の湿り気が、ロビーに満ちる柔らかな温もりに触れて、ゆっくりとほどけていく。自動ドアが開いた瞬間に流れ込んできたのは、微かに漂うお香のような落ち着いた香りと、外の刺すような寒さを忘れさせるほどの濃密な熱気だった。チ…