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浴衣の裾を、誰かがずっと踏んでいた

浴衣の裾を、誰かがずっと踏んでいた

記憶の輪郭を刻む、旅の五つの音

冷たい窓ガラスに指を触れたとき、「パパ、お城が光ってる!」という子供の高い声が部屋に響いた。KOKO HOTEL Premier 熊本の窓から見下ろす熊本城のライトアップは、夜の深い闇にゆっくりと溶け出す金色のインクのように幻想的で、見る者の心を静かに塗り替えていく。計画していた観光ルートはとうに崩れていたけれど、黄金色の光に照らされた子供の横顔だけは、驚くほど静かで、確かな幸福に満ちた輪郭をしていた。

アスファルトから立ち昇る陽炎が視界を揺らし、足裏にじりじりと熱気が伝わってくる中、カランコロンと乾いた下駄の音が鳴っていた。家族で祭りに向かう道すがら、次男が何度も浴衣の裾を踏んでは、小さな悲鳴を上げている。それは優雅な散歩というよりは、賑やかで不格好な行軍に近かったが、その不規則なリズムこそが、後になって一番鮮やかに思い出す旅の正体になるのかもしれない。

豪華特大ベッドルームに足を踏み入れた瞬間、エアコンが低い唸りを上げて、外の湿った熱気を一気に切り裂いた。その音は、今日という心地よい戦いが終わったことを告げる合図のように聞こえる。シモンズ製ベッドのシーツは、肌に触れるとひんやりとしていて、洗い立てのリネンの清潔な香りが鼻をくすぐった。肩の力がふっと抜け、心の中に溜まっていた緊張が、温かい水に溶ける塩のようにゆっくりと消えていくのを感じた。

「ほら、じっとしててね」という、大人の焦った声と、布を強く引っ張る音。浴衣の生地は少し硬く、帯を締める作業は大人三人がかりの共同作戦のような騒ぎになった。もつれた帯と、泣きべそをかく子供。けれど、ふと鏡を見た次男が、自分の凛々しい姿に満足して急に黙った。その数秒間の静寂は、どんなに完璧なスケジュールをこなすことよりも価値がある、最高の勝利だったと思う。

遠くで、胸の奥を震わせるような「ドン」という重厚な花火の音がした。バルコニーに肩を並べて、私たちはただ夜空を見上げていた。音は耳に届く前に、まず身体への振動として伝わり、心地よい圧迫感となって心を満たしていく。子供たちの呼吸が少しずつゆっくりになり、昼間の喧騒が深い藍色に染まっていく。この瞬間、旅の記憶が家族という白い紙に、飽和するまで深く濃く染み込んでいった気がする。

白いシーツの上で、飴の包み紙を握りしめたまま眠る小さな手のひら。

  • サクラマチクマモトのバスターミナルが直結しているので、あえて行き先を決めずに、子供の「あそこに行きたい」という直感に身を任せて歩くのが正解だと思う。
  • お城が見えるお部屋なら、街が完全に目覚める前の、午前6時の静謐な光の中で、刻一刻と色を変える景色を眺めてほしい。