← 戻る 佳乃や

湯気の向こうで、紅葉が揺れていた

湯気の向こうで、紅葉が揺れていた

靴の裏が泥で汚れるまで歩いた

草津の10月は、靴の裏が泥で汚れるまで歩いてもいいと思える季節だ。湯畑の周りを行き交う人々の足音が、木の葉を踏みしめる音と混じり合う。私たちが選んだ道は、いつも誰かに教えられたわけじゃない。ただ、紅葉の色が濃くなる方向に向かって、何となく足が向いた。


足湯で温まった足の裏が、紅葉の色と同じくらい赤く染まった

足湯の温度は、42度。最初は熱いと思ったけれど、やがて体が慣れてきた。湯の成分が肌に絡みつく感じがして、不思議と落ち着く。隣であなたが「これ、本当に温泉?」と首を傾げる。私も同じことを思っていた。温泉って、こういうものなのかもしれない。


ステンドグラス越しの光が、ラウンジのソファを黄色く染めていた

夜のラウンジには、誰もいなかった。あるいは、誰もが見えないところで息を潜めていたのかもしれない。ステンドグラスから差し込む光が、ソファの背もたれに模様を描いている。その模様が、時間と共にゆっくりと動いている気がした。


和室の布団に入って、本を読み始めた。あなたの寝息が、ページをめくる音と重なった

布団の温もりが、体の奥まで届く。読みかけの本を手に取ると、ページの角が少しだけ曲がっていた。誰かが同じ本を読んでいたのかもしれない。それとも、ただの偶然か。本の表紙を指で撫でると、紙のざらつきが心地よかった。


夜明けの窓際に、湯気がうっすらと残っていた。
  • 草津白根山の紅葉スポットまで、車で15分の距離。
  • 佳乃や (Yoshinoya) の足湯で、42度の温泉を足の裏で感じながら紅葉を眺める。