← 戻る KOKO HOTEL 京都三条

靴下を脱いだとき、やっと家族に戻れた気がした

靴下を脱いだとき、やっと家族に戻れた気がした

指先に残る、少しだけベタつく飴の感触。チェックインのとき、下の子がカウンターの冷たい大理石にその手をぺたっと付けた。ふわりと漂うロビーの清潔なアロマの香りと、子供が運んできた甘い匂いが混ざり合う。スタッフの方はその小さな汚れをじっと見て、それからいたずらっぽく、小さく頷いた。「あぁ、親御さんは大変ですね」という共鳴のようなものが、言葉にならない微笑みとなって静かにそこにあった気がする。


外の空気は、肺の奥まで凍りつかせるような鋭さだった。京都の冬の凛とした冷気が、肌を刺す。けれど、KOKO HOTEL 京都三条のドアを開けた瞬間、ぬるい温もりに包み込まれた。その劇的な温度差に、ずっと張り詰めていた肩の力がふっと抜けていく。もう、誰の機嫌を伺わなくてもいい。ここは心地よい繭のような場所。ただこの暖かい空間に身を委ねていいのだという、静かな許可をもらった気分だった。
三条京阪駅からホテルまで、歩いてわずか3分。大人は「近い」と感じるけれど、子供にとっては「いつ着くの?」と三回は聞きたくなる、もどかしくも絶妙な距離だ。アスファルトを叩く小さな靴の乾いた音と、河原町や先斗町の喧騒が遠くで混ざり合う。その賑やかなリズムが、ホテルの静寂に溶け込んでいくときの感覚。音の空白が、心地よい重さを持って降りてくる。外界の騒がしさが消え、家族だけの時間がゆっくりと動き出す。
近所の店で買った、焼きたての温かいお菓子。指先に伝わる袋の熱量と、口の中でゆっくりと溶ける濃厚な甘さが、冷え切った心まで届く。尊貴特大床房のゆとりある空間で、贅沢なディナーよりも、こうして家族で肩を寄せ合って小さな幸せを分け合う時間の方が、ずっと記憶に深く刻まれる。バターの香ばしい匂いが、部屋の隅々にまでゆっくりと、優しく広がっていく。
朝の7時。カーテンの隙間から差し込む淡い光が、真っ白なシーツの上に細い線を描いている。並んだベッドは、まるで海に浮かぶ三つの小さな島だ。上の子は自分の島を死守し、下の子はその間にあるわずかな隙間を「溶岩の川」に見立てて、慎重に飛び越えようとしていた。光の中を舞う小さな埃さえもキラキラと輝いて見える。そんな光景を眺めていると、旅のしっちゃかめっちゃかは、ある種の愛なのだと思えてくる。
肌に触れる、パジャマのさらりとした質感。使い古された自宅の服よりも、少しだけよそよそしくて、だからこそ心地よい。生地のひんやりとした温度が、旅先での心地よい緊張をゆっくりと解いてくれる。誰のものでもない、ただの「宿泊客」としてこの空間に溶け込む贅沢。日常の役割を脱ぎ捨てて、ただの自分に戻れる時間は、何物にも代えがたい静かな休息だった。
最後には、みんなで一つの大きな溜息をつく。疲れ切った子供たちが、誰からともなく寄り添い、三つの呼吸がゆっくりと同期していく。暗闇の中で、互いの体温だけが確かな情報として伝わってくる。何も解決していないし、明日の予定もまだ混沌としているけれど、今はただ、ここにいればいい。そんな絶対的な安心感が、部屋の空気を柔らかく満たしていた。

心地よい静寂が、ゆっくりと私たちを深い眠りに誘う。

  • 三条エリアの路地裏をあえて地図を持たずに歩き、子供と一緒に「不思議な形の石」を探してコレクションしてみる。
  • ベッドを並べて家族だけの小さなキャンプごっこをしながら、明日の冒険プランをひそひそ話で相談してみる。