← 戻る 竹美山閣アートガーデン

森の静寂と家族の記憶を綴る五つの音

湯気に包まれた浴室に響く、バシャバシャという賑やかな水音。次男が「温泉ってどこから来るの?」と瞳を輝かせて問いかけ、お湯をあちこちに飛ばしている。微かに漂う硫黄の香りと、頬を撫でる温かい雫。完璧な静寂を求めていたはずなのに、この騒がしい幸福こそが旅の正解なのだと、心から納得した瞬間だった。

窓の外でサササと鳴る、乾いた秋葉の囁き。竹美山閣 藝術園區の深い森が、11月の冷たい風に揺れてガラスを叩く微かなリズムを刻んでいる。黄金色に染まった木々を眺めながら、隣で眠い目をこすり、小さく不規則な寝息を漏らす長女。早朝の鋭い空気が肺の奥まで洗われ、予定に縛られない自由な時間がゆっくりと流れ始める。

ベルベットのような欧州風ソファに深く沈み込んだとき、肺から漏れた「ふぅ」という長い吐息。ギャラリーに流れる柔らかな洋楽と、淹れたての紅茶の芳醇な香りが、凝り固まった肩の力をゆっくりと解いていく。不思議な造形の彫刻を前に、子供たちが小声で話し合う気配。芸術を正しく鑑賞することよりも、この心地よい倦怠感の中で家族の体温を感じる時間こそが、何よりの贅沢に思えた。

廊下に響き渡る、タッタッタッという軽快な足音。サイズが合わず裾を引きずっているバスローブをマントに見立て、次男が全力で疾走している。裸足で踏む床のひんやりとした感触と、布が空気を切る音。大人は「走らないで」と口にするが、その声には心地よい諦めが混じっている。この空間の広さが、子供たちの想像力を森の枝葉のように自由に膨らませていた。

夜の帳が降りた頃に聞こえてきた、大地を揺らす太鼓の鼓動と原住民の力強い歌声。床を通じて足の裏に伝わる振動が、心地よく心拍数を上げていく。恥ずかしそうに、でもリズムに合わせて体を揺らす子供たちの小さな笑い声。言葉の壁を越え、音と熱量だけで繋がれる瞬間。私たちはただそのリズムの一部となり、竹美山閣 藝術園區の満天の星空の下、深い夜の闇に溶け込んでいった。

湯上がりの火照った頬に、秋の夜風が心地よく触れた。

  • 11月の山間部は冷え込むため、お子様には厚手の靴下を。足元が温かいだけで、温泉後の安心感が格段に変わります。
  • アートギャラリーのソファで「何もしない時間」を。あえて予定を空けて、森の景色に身を任せる贅沢を味わってください。