ロビーに鎮座する、場違いなほどに輝くヴィンテージカー
チェックインして最初に視界に飛び込んできたのは、豪華なクリスタルランプではなく、一台の光り輝くBMWだった。磨き上げられたクロームの輝きと、どこか懐かしいレザーの香りが漂う空間で、私たちは忽然「誰が一番貴族っぽくポーズを決められるか」という、どうでもいい賭けを始めた。「もっと顎を上げて、余裕な顔をして!」と笑い合いながら不格好にポーズを決める私たちを、スタッフの方が温かい苦笑いで見守っていた。最高にダサくて、最高に愉快な旅の幕開けだった。
12月の冷気に突き動かされた、万坪公園での全力疾走
ホテルの目の前に広がる竹南運動公園へ足を踏み出した瞬間、冬の鋭い空気が肺の奥まで突き刺さった。誰が一番先に寒さで震え出すかという賭けをしていたはずなのに、気づけば私たちは寒さを忘れ、どこまでも続く広い芝生の上をただひたすら走り回っていた。冷たい風に煽られ、鼻の頭を真っ赤に染めて息を切らしている友人の顔を見た瞬間、同時にツッコミを入れながら腹がよじれるほど笑った。冬の澄んだ空気の中で、心だけが熱く燃えていた時間だった。
温度の境界線が溶け合う、室内プールの静寂
外の凍てつく冷気から逃れるように潜り込んだSPAエリアのプールは、水面が淡いサファイア色に揺れていた。水に飛び込んだ瞬間、肌を刺していた緊張がふわりとほどけ、ぬるま湯のような心地よさが全身を包み込む。水中でぼんやりと天井を見上げていると、耳に届くのはこもった水の音だけになり、ここが台湾の苗栗なのか、それとも遠いヨーロッパの街なのか分からなくなる。日常の喧騒が遠のき、ただ心地よい浮遊感に身を任せていた。
クラシックな部屋に散らばった、愛おしい生活感
重厚な扉を開けると、そこにはヨーロッパの古城を思わせる優雅な装飾が施された部屋が広がっていた。けれど、その完璧な空間に、使い古したスーツケースや脱ぎ捨てた靴下が乱雑に散らばっている。そのあまりに不釣り合いな対比が、なんだか可笑しくて愛おしく感じられた。上質なリネンの滑らかな感触に身を沈めながら、「明日なんて来なくていいのにね」と、とりとめもない会話を夜が更けるまで続けた。豪華な空間が、かえって私たちの素顔を引き出してくれた気がする。
湯気でメガネが曇る、江技旧記のワントンの温もり
旅の締めくくりに訪れた店で食べたワントンの、あの熱いスープの温度が忘れられない。一口すすると、喉から胸にかけてじわっと黄金色の温かさが広がり、凍えていた指先まで血が巡るのが分かった。みんなでメガネを真っ白に曇らせながら、「やっぱりこれが正解だよね」と顔を見合わせたあの瞬間。言葉にしなくても、お互いの心地よさが伝わり合う、静かで深い充足感に満たされていた。
これらの断片が重なって、一つの色になった
苗栗馥藝金鬱金香酒店という、少しだけ背伸びをした贅沢な空間に身を置いたことで、私たちの関係性はいつもよりずっと緩やかに、そして深く結びついたのかもしれない。豪華なシャンデリアや重厚な調度品という「完璧な枠組み」があったからこそ、その中でわざとふざけ合い、崩れた姿を見せ合える自由さが際立った。冬の刺すような冷気と、ホテルの琥珀色の照明。その鮮やかな温度差に身を任せて、私たちはただ、一緒にいることの絶対的な安心感を再確認していた。特別な何かを成し遂げたわけではないけれど、隣で笑い合えたという事実が、年末の心に静かに、けれど確かに積み重なっていく。それは、緻密に計画された旅程よりもずっと価値のある、不確実で愛おしい時間だった。
窓の外で、冬の夜空が深い紺色に溶けていく。
- 朝の澄んだ空気の中で、目の前の運動公園をゆっくり散歩してほしい。
- 江技旧記のワントンを食べたら、そのまま温もりが冷めないうちにホテルに戻るのが正解。