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くだらなすぎる私たちの時間を静かに見守っていたものたち

  • クイーンサイズのベッド:ひんやりとした綿のシーツが肌に吸い付く心地よさ。誰が真ん中で寝るかという、大人のプライドを掛けた低レベルな政治交渉を30分間も静かに吸収していた。もみくちゃにされたシーツの皺は、私たちの意地の張り合いの記録そのものだ。
  • 村の人からもらった季節の果物:完熟した果実の甘い香りが部屋いっぱいに充満する中、誰が一番多く食べられるかという、不毛極まりない大食い競争の証人となった。テーブルに飛び散った鮮やかな果汁の滴が、誰が一番に負けたかを雄弁に物語っている。
  • 裸足で触れた木の床:酔った誰かが派手にバランスを崩し、「おっとっと!」という情けない悲鳴と共に床に叩きつけられた瞬間の激しい振動を記憶している。その温度は、夏の夜の熱気を帯びた、心地よいぬるさだった。
  • リネンのカーテン:8月の激しい雷雨が窓を叩き、世界を白く塗りつぶす音を聞きながら、「明日こそは予定通りに動こう」という、どう考えても実現不可能な嘘のような約束を、風に揺られながら静かに聞き流していた。
  • 冷めきったコーヒーカップ:完璧に書き込まれた旅程表が、開始1時間でゴミ箱行きになるまでの、あの絶望的なまでの脱力感を特等席で眺めていた。カップの底に残った苦い液体が、私たちの計画性のなさを静かに嘲笑っていたのかもしれない。

もしこれらの物たちが口を開いたなら

きっと彼らは、私たちのことを「救いようのない、けれど最高に愉快な迷子たち」と呼ぶだろう。もともとは、七夕の願い事をしたり、遠く離れた貢寮の海まで足を伸ばそうなんて、いかにも「旅慣れた大人」らしい完璧な計画を立てていたはずだった。けれど、結果的に私たちが辿り着いたのは、I Sky Villaの心地よい静寂と、止まらない笑い声だけ。

8月の苗栗は、空気が湿り気を帯びて重い。けれど、その重さがまるで温かい毛布のように心地よい。雨上がりの午後、開放的なポーチに座って深く息を吸い込むと、樟の木の濃い香りと、どこか懐かしい柚子の匂いが混ざり合って、肺の隅々まで満たしていく。「ねえ、見てよ。左右で違う色の靴下履いてるし!」誰かが叫び、そこからまた15分ほど笑い転げた。そんな、地図には載っていない空白の時間こそが、この旅の正体だったのだと、今ならわかる。

モダンで温かみのあるダイニングルームで、ホスト夫婦が語る「夢を追いかけてこの場所を作った話」に耳を傾けていると、「計画なんて、ただの飾りだったんだな」という心地よい諦めが、静かに胸に広がった。それは、張り詰めていた心の糸がふっと緩むような感覚だった。朝食に用意された地元の食材の温かさや、キッチンで誰かが淹れたお茶の湯気が、私たちの心をさらに解きほぐしていく。オーダーメイドの木製ベッドに体を沈めると、自分たちが何者であるか、どこへ向かっていたのか、そんなことはどうでもよくなってくる。ただ、隣で誰かが心地よさそうに寝息を立てていて、外では夜の風が木々を揺らし、遠くで夜鳥が鳴いている。不完全であることの心地よさを、この場所は教えてくれた。私たちは、計画を捨てることで、ようやく本当の旅を始めたのだと思う。

雨上がりの空に、不自然なほど鮮やかなオレンジ色が溶け出していた。

  • 造橋駅から宿までの短い距離を、あえてゆっくり歩いて、名もなき草花を観察してほしい。
  • 地元の村人が育てた果物を、ぜひ一番贅沢な方法(つまり、誰にも遠慮せず大量に)で食べてみて。