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家族の記憶に刻まれた、5つの小さなしるし

10月の苗栗を包み込む空気は、驚くほど親切だった。暑すぎず、かといって肌寒くもない。黄金色に透き通った陽光の下で外に座っているだけで、時間がゆっくりと甘い砂糖のように溶けていく。そんな心地よい温度に、心まで解きほぐされていくのがわかった。車を降りた瞬間、ふわりと鼻腔をくすぐったのは、雨上がりの湿った土の香りと、どこか懐かしい青い草の匂い。それは、都会で忘れかけていた「土の記憶」を呼び覚ます香りだった。

今回の目的地は、その名からして賑やかな「泉銘行館-苗栗大湖採草莓園/休閒農場/民宿/住宿/休閒農場 人氣推薦觀光 採草莓一日遊 草莓醬/草莓酒 親子活動/手做DIY 國旅卡特約 大湖酒莊附近 熱門好評推薦 PTT Dcard」。正直に言って、到着した瞬間に感じたのは、洗練された高級ホテルの緊張感ではなく、親戚の家に招かれたときのような、少し不器用で、けれど底抜けに温かい空気感だった。まるで、使い込まれた柔らかなリネンのシーツに包まれているような安心感がある。

「見て!ここ、イチゴの匂いがするよ!」と長男が歓声を上げ、次男がその横で転げ回っている。そんな混沌とした光景さえも、この場所では心地よいBGMのように響いた。私たちは、分刻みのスケジュールで完璧な家族旅行を演じることを、そっと諦めた。ただ、そこにある素朴な質感に身を任せ、流れるままに過ごすことにしたのだ。

家族の記憶に刻まれた、5つの小さなしるし

真っ赤なイチゴ:指先をわずかに粘つく甘い果汁が濡らし、口の中で弾けた瞬間に鮮やかな酸味が突き抜ける。太陽の光をたっぷり吸い込んだ果実の濃密な香りを、誰よりも早く見つけ出し、誇らしげに掲げたのは次男だった。

湯気の立つ浴槽:お湯に身を沈めた瞬間、凝り固まった肩の力がふっと消えていく。浴室に響き渡る子供たちの賑やかな水しぶきと笑い声が、心地よいリズムとなって肌に伝わる。この深い充足感を、まず誰よりも堪能していたのは私たち夫婦だった。

温かいお粥:朝の静寂の中、手のひらに伝わる陶器のじんわりとした温度。飾り気のないシンプルな味が、胃の奥からゆっくりと体温を上げていく。湯気の向こうに見える穏やかな景色と、その素朴な美味しさに一番に気づいたのは、意外にも偏食家の長男だった。

風量の弱いドライヤー:じっくりと時間をかけて髪を乾かさなければならない、もどかしいほどの静かな風。けれど、その空白の時間があったからこそ、普段は聞き流してしまう子供たちのとりとめもない空想話に耳を傾けることができた。この「不便さ」という名の贅沢を、最初に受け入れたのは母親である私だった。

バルコニーからの緑:早朝、カーテンを開けた瞬間に飛び込んできた、どこまでも続く農園の深いエメラルド色。冷たくない風が頬を優しく撫で、世界がまだ深い眠りについているような静謐な時間。それをただ黙って、心に刻みつけるように眺めていたのは、家族全員だった。

チェックアウトのとき、子供たちの靴の底に小さな土がついているのを見て、なんだかとても正しい旅をしたな、という気がした。

窓の外で揺れる深い緑と、遠くで聞こえる鳥のさえずり。

  • 10月の気候は最高なので、予定を詰め込まず、バルコニーでぼーっとする時間を確保してください。
  • ドライヤーに時間はかかりますが、それを家族の会話の時間に変えてみるのが、この宿の正しい楽しみ方です。