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「近道」という名の絶望的な喜劇

「ねえ、誰がこれを近道だって言った? 誰なのよ!」

照り返しの強いアスファルトの上で、誰かが絶叫に近い声を上げた。七月の苗栗は、太陽が空にあるのではなく、地面から直接私たちを焼き尽くそうとしているみたいだった。肺に吸い込む空気は熱く、乾いた土と焼けたゴムのような匂いが鼻をつく。耳の奥でジリジリと陽炎が鳴っている気がした。

「いや、マップではこっちが最短だったし……」

「マップが嘘をついたんじゃなくて、君が読み方を間違えただけでしょ! 見てよこの汗、服が肌に張り付いてて、自分が人間じゃなくて濡れた雑巾になった気分なんだけど」

「いいじゃん、これも冒険だよ。結果的に、誰も見たことがない路地裏を探索できたし」

「探索っていうか、迷子。完全に迷子! 誰か、氷のように冷たい飲み物と、エアコンの効いた部屋を今すぐ提供して。じゃないと、ここで溶けて液状化して消えちゃう」

私たちは互いに呆れながら、それでも笑っていた。誰かが「賭けてもいいけど、この後みんなで『最高の思い出』とか言い出すよね」と吐き捨て、全員で同時に「最悪だよ!」と叫んだ。それが私たちの、いつもの作法だった。

喧騒の隣に潜む、静寂という名の贅沢

尚順君樂飯店の重いドアを開けた瞬間、肺の奥まで冷たい空気が流れ込んできた。それは単なる温度の低下ではなく、外界の熱狂と疲労から切り離されたという、ある種の境界線を越えた感覚だった。肌に残った汗が急速に冷え、うっすらと鳥肌が立つ。その心地よい温度差が、今ようやく「安全圏」に戻ってきたことを身体に教え込んでくれる。

部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは、白を基調とした清潔で広々とした空間だった。裸足で踏みしめたカーペットの厚みが、外で歩き疲れた足裏の緊張をゆっくりと解いていく。この絨毯がどれだけ自分の足音を飲み込んでくれるか、その静寂の深さに気づくとき、心まで凪いでいくのがわかった。

特に印象的だったのは、ゆったりとした浴槽だ。そこに身を沈めれば、路地裏で浴びた埃も、苛立ちも、すべてが湯気に溶けて消えていく。窓の外には、六層もの高さを持つ賑やかな室内遊園地が広がっているはずなのに、ここにあるのは完全な静寂だった。それは、単に音が無いということではなく、心地よい静けさが部屋全体を充填している状態だ。まるで、深い水底に潜っているときの、あの耳の奥がかすかに圧迫されるような、密やかな安心感に似ている。

エアコンの低いハム音が、一定のリズムで部屋の空気を循環させている。その音が、かえって静寂を際立たせていた。もしかすると、私たちはこの旅に「正解」なんて求めていなかったのかもしれない。ただ、誰と一緒に、どんな温度の場所で、どんなくだらない会話を交わすか。それだけが重要だった。部屋の隅にある小さなテーブルに置かれたグラスの中で、氷がカランと音を立てて溶けていく。その小さな音が、今の私たちにとって、世界で一番贅沢な音楽に聞こえた。

湯気の向こう側に触れる、夜の本音

「……結局、あの路地裏、何だったんだろうね」

部屋の明かりを少し落として、買ってきたジャンジー・ジウジーのフントゥンを並べる。器から立ち上がる白い湯気が、私たちの顔をぼんやりと包み込んだ。昼間の激しい口論が嘘のように、声のトーンが一段階下がっている。

「さあね。でも、あの絶望的な暑さがあったから、今のこの冷房が天国みたいに感じるんだと思う」

「あー、わかる。不幸の後の幸福っていうか、落差で得してる感じ」

「ねえ、私たち、十年後もこんな風に、くだらないことで言い争いながら旅行してるかな」

「たぶんね。その時は、もっと足腰が弱くなって、近道なんて夢のまた夢になってるだろうけど」

誰かが小さく笑い、私は箸でふんわりとしたフントゥンを口に運んだ。出汁の優しい味が広がって、身体の芯まで温まる。外はまだ七月の熱帯夜かもしれないけれど、この部屋の中だけは、ちょうどいい温度だった。私たちは、あえて深い言葉で結びつこうとはしなかった。ただ、隣に誰かがいて、同じ温度の空気を吸っている。それだけで十分だということが、言葉にしなくても伝わっていた。

窓の外で、遠くの街灯がゆっくりと瞬きをしていた。

  • ジャンジー・ジウジーのフントゥンはぜひ熱いうちに。旅の疲れを静かに溶かしてくれます。
  • 尚順君樂飯店の広い部屋で、あえて何もしない時間を。静寂の質が変わるはずです。