冷たいポケットの中で、小さな手が握られていた
静岡駅の北口へ出た瞬間、肺の奥まで刺さるような鋭い冷気が流れ込んできた。1月の静岡の空気は、まるで薄いガラスの板を幾重にも重ねたように張り詰めており、吐き出す息は白く、瞬時に冬の空へと溶けていく。右手にずっしりと重いスーツケースを握りしめ、…
廊下で握った、小さな手の温度
駅の改札を抜けた瞬間、五月の静岡の空気はしっとりと肌にまとわりつき、どこか若葉のような甘い香りを運んできた。キャリーケースの車輪がアスファルトを叩く不規則で乾いたリズムが、旅の始まりを告げる鼓動のように響く。右手に持った大きなバッグの重みが…