小さなコートに、梅の香りがついていた
絨毯に深く沈み込む、小さなスニーカーの足音。タカタカと急ぎ足でロビーを横切る次男の背中を追いかけながら、私は中島屋グランドホテルの入り口で、冬の凛とした冷たい空気を深く吸い込んだ。子供にとって、ホテルの廊下は未知の迷宮だ。大人の歩幅では捉え…
濡れた靴底が奏でる、小さなリズム
傘の柄の、少しだけぬるい感触から始まった。6月の静岡は、空気がまるでお湯に浸かっているかのように重く、肌にまとわりつく。静岡駅からホテルへ向かう道すがら、地下道のコンクリートが放つひんやりとした湿った匂いが鼻をくすぐった。上の子が「あっちに…