靴の中に迷い込んだ、一枚のピンク色の記憶
次男の靴のベルクロ部分に、小さな桜の花びらが一枚、しがみついていた。それはまるで、彼が歩いた道のすべてを記録していた記憶の栞のように、しぶとくそこに留まっていた。上野公園の桜は、大人が思うよりもずっと低い位置で、子供たちの目線に寄り添って咲…
雨上がりの靴音が、廊下に響くまで
「ピピピ」という電子レンジの乾いた電子音が、まだ微睡みのなかにいる部屋に心地よく響き渡る。温められたミルクの甘い香りが、6月のしっとりと湿った朝の空気に溶け込み、眠っていた意識をゆっくりと呼び覚ましてくれた。上の子は「もう行くの?」と、名残…