ロビーに足を踏み入れた瞬間、肌にまとわりついていた夏の湿気が、冷たい空気の壁に弾かれた。まるで熱を出した額に冷たいタオルを当てられたときのような、鋭く心地よい衝撃。私たちはここで「誰が一番先に迷子になるか」に賭けた。結果的に、全員で同じ方向に迷い込んだけれど。ふふ、ありえないよね。
鼻をくすぐる、かすかに硫黄が混じった濃密な湯気の匂い。地獄蒸しの野菜を口に運ぶと、素材の甘みがじゅわっと広がり、胃のあたりからじんわりと熱が染み渡る。ぶっちゃけ、この黄金色のトウモロコシを食べたら、もう普通の生活に戻れないかもしれない。君も一口食べてみて。きっと、世界が変わるから。
浴衣の帯が、想像以上に硬くて不自由だ。もがけばもがくほど、結び目が複雑な迷路のように絡まっていく。鏡を見た友人が「ねえ、あなた完全に巻き寿司になってるよ」と爆笑した。正直、笑いすぎてお腹が痛かったけれど、その不格好さがなんだか心地よかった。完璧じゃない旅の方が、後で語り合えるしね。
七夕の短冊。指先に触れる和紙の、少しザラついた乾いた質感。私たちは真面目な願い事なんて捨てて、「次の旅行で誰が一番高い買い物をするか」なんてくだらないことを書き込んだ。笹の葉がさらさらと風に揺れる音が、私たちの幼さを優しく肯定してくれている気がした。
お湯に身を沈めると、心地よい水圧が肩の凝りをゆっくりと押し流していく。温度は絶妙で、肌がほんのりと桜色に染まっていく。誰かが喋り出すのを待っているけれど、誰も口を開かない。でも、その沈黙は寂しさではなく、共有している安心感のような、心地よい重さだった。そういう時間があってもいい。
ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパの部屋で迎えた午前6時。真っ白なリネンに包まれて、窓から差し込む透き通った青い光を眺めていた。ベッドから窓辺までの数歩の距離が、この静寂の中ではとても贅沢な旅路に感じられる。都会の喧騒とは違う、呼吸が深く、ゆっくりと落ちていく種類の静寂だった。
夜空を切り裂く、地鳴りのような大きな音。胸の奥まで振動が伝わって、不意に全員が肩を跳ねさせた。7月の花火は、光よりも先に音がやってくる。暗闇の中で、互いの驚いた顔がぼんやりと見えて、また笑い合う。そんな単純なことが、どうしてこんなに心を軽くしてくれるんだろう。
チェックアウトの時、スーツケースの重さが、旅の思い出の量みたいに感じられた。閉まるドアの乾いた音が、心地よい余韻となって背中に残る。私たちはまた違う場所で、違う顔をして過ごすけれど、この別府の湿った風と笑い声だけは、ずっと皮膚の一部として刻まれている気がする。
最後の一歩を踏み出すとき、振り返らずに手を振った。
- ぜひ、あえて計画を立てずにホテル周辺を散歩してみて。面白い路地が見つかるから。
- スパの後の冷たい飲み物は、人生で一番美味しいかもしれない。絶対に試して。