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悴んだ指先で、温かいココアを分かち合った夜

凍えた指先と、迷子のスーツケース

耳の端がちりちりと痛む、鋭い冬の風。別府駅に降り立った瞬間、肺の奥まで凍りつくような冷気が流れ込んできた。「予約メール、誰が持ってたっけ?」という焦った声が、アスファルトの上を転がるスーツケースの不協和音に混ざる。私たちは、表面張力でかろうじてくっついている水滴のように、バラバラになりながらも離れられない奇妙な連帯感に包まれていた。そんな混沌の中、視界に飛び込んできたのは、冬の灰色を塗り替えるような鮮やかなオレンジ色の壁だった。

ホテルエールが私たちに教えてくれた4つの真実

「徒歩7分」という言葉の伸縮性 荷物の重さと寒さによって、距離という概念は容易に歪む。アスファルトを叩くキャスターの乾いた音に急かされ、「こっちじゃない?」と誰かが言い張ったおかげで想定外の散歩を強いられたが、その分、街に漂う濃厚な硫黄の香りと冬の静寂を深く吸い込むことができた。

九州で南仏を錯覚する視覚的裏切り
白とオレンジに彩られた洋風の外観を前に、「ここ、本当に大分?」と全員で顔を見合わせた。潮風の香りと共に、日常の延長線上にあるはずの旅が、一瞬にして異国の街角へと塗り替えられる。そんな心地よい視覚的な裏切りは、旅人の心を軽くしてくれる最高のスパイスだ。

屋上露天風呂という名の、静かなる忍耐競争
氷のような外気と、芯まで溶かす熱い湯。肌がちりちりと疼くほどの激しい温度差に、最初は「熱い!」と騒ぎ立てていたが、やがて心地よい沈黙が訪れた。誰が一番長く浸っていられるかという不毛な賭けをしながら、私たちはただ、湯気の向こうに広がる冬の空をぼーっと眺めていた。

トリプルルームという名の、人間関係テトリス
洗いたてのリネンの香りが漂う空間に、四人分の荷物をどう配置するかというパズルに挑むとき、私たちは自分たちの心の距離感を再確認していた。深夜、誰がどのベッドを使うかという静かな権力争いの末に、一番狭い場所を譲り合ったとき、不思議と心地よい連帯感が胸に広がった。

リストの外側で見つけた、青い静寂

計画表にはなかったが、早朝の展望ラウンジから眺めたベイサイドの景色が、結局一番の記憶に刻まれている。夜明け前の海は深い濃紺色に染まり、ヨットハーバーに停泊する船たちが、静かに呼吸を合わせているようだった。窓ガラスに結露した白い水滴を指でなぞると、外の景色が滲んで、世界が淡い水彩画のように溶けていく。昨夜の些細な言い合いなんてどうでもいいくらい、私たちはただ黙ってその青い世界に浸っていた。誰かが小さく笑い、それに合わせて別の誰かが肩をすくめる。言葉を介さない共鳴。それは、冷たい空気の中でだけ分かち合える、贅沢な体温の共有だった。Hotel Aileという場所は、不揃いな私たちが一つの心地よい塊に溶け合うための、温かな容器だったのだ。

港に停泊する白い船と、冬の淡い光が溶け合う景色を、いつまでも眺めていたかった。

  • 駅からホテルまで、あえて寄り道をしながら、冬の街に漂う硫黄の匂いを探して歩いてみて。
  • 屋上の露天風呂で、夜の静寂に包まれながら別府の街の灯りをゆっくりと楽しんで。