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潮風が、誰かの笑い声を運んできた

私たちの「迷走」を静かに記録していた5つの目撃者

白いカーテン: 午前6時の、肌を刺すような冷たい空気と、窓の外から忍び寄る潮の香り。パスポートを失くした誰かの絶望的な叫び声と、それを心地よく笑う私たちの不謹慎な声が、薄い布を激しく震わせていた。それはまるで、敗北を認めた白い旗が、朝の光の中でひらひらと舞っているみたいだった。

ベッドのシーツ: 深夜2時の、コンビニで買ったポテトチップスの油っぽい匂いと、微かに混じる柔軟剤の香り。クラゲに脳があるかないかという、人生で最も無意味で、それでいて熱量の高い議論が、シーツの深いシワに刻み込まれている。誰かが寝返りを打つたびに、その議論の残骸が埃のように舞い上がる気がした。

バスルームのタイル: 裸足で踏んだときの、不意に訪れるひんやりとした、硬い陶器の感触。全員分のおしぼりが足りないことに気づいた瞬間の、あの妙な、真空のような静寂。誰が最後に使ったのかという犯人探しが始まるまでの、わずか3秒の空白に、私たちの気まずい連帯感が漂っていた。

ルームキー: ロビーで「誰が持ってる?」という、10分間に及ぶ不毛なパス回し。手のひらに当たったプラスチックの、小さくて硬い、冷ややかな感触。私たちはわざと時間をかけて、この単純なタスクを複雑なパズルに変えていた。そのたびに、カチカチと鳴るプラスチックの音が、私たちの幼稚な高揚感を煽っていた。

窓辺の棚: 誰かがわざと、あるいは不注意に持ち込んだ、桜の花びらの山。指先で触れると、驚くほど柔らかく、儚い感触。それはまるで、小さな、ピンク色の事件現場のようだった。4月の風が運んできた春の断片がそこに積み重なり、部屋の中にまで春が侵入してきたことを静かに告げていた。

もしこの部屋が口をひらいたなら

もしこの部屋に意識があって、私たちのことを誰かに報告するとしたら、きっと「騒音被害の事例」として詳細に記述するだろう。誇張ではなく、私たちは旅人というより、歩く残響(リバーブ)だった。信じられないかもしれないが、JR別府駅からホテルエールまで歩くわずか7分の間、私たちはどちらが北かという不毛な議論を繰り広げ、結果、目的地が目の前にあることに気づいて全員で呆れた。そんな私たちを迎え入れたHotel Aileの白とオレンジの外観は、視覚的な高周波のような明るさを持っていて、私たちはそこに全力で衝突した。

トリプルルームに入った瞬間、そこは完璧な共鳴室になった。スーツケースのキャスターが床を叩く乾いた音、重なり合う笑い声、そして誰かが言いかけた冗談が壁に当たって跳ね返ってくる感覚。それは決して心地よいメロディではなく、制御不能な不協和音だった。けれど、地面から湯気がゆっくりと呼吸するように立ち上るこの街で、私たちの騒がしさは、自分たちがここにいるという唯一の証明だったのかもしれない。

ベイサイドビューの窓から見える海を眺めながら、裸足で歩いたときの距離感。深夜、ふと訪れた静寂の中で聞こえた、誰かの小さく規則的な寝息。そういう、音の隙間にこそ、この旅の正体が隠れている気がする。私たちは何かを「見つける」ために来たわけじゃない。ただ、この南仏風の明るい空間の中で、お互いの周波数をぶつけ合い、心地よい耳鳴りを共有したかっただけなのだと思う。結局、誰一人として計画通りに動かなかったけれど、それが一番「私たちらしい」旅だった。

夕暮れの別府湾は、驚くほど静かで、私たちの騒がしさをすべて飲み込んでいた。

  • うみたまごで、自分たちに一番似ている魚を誰が当てられるか賭けてみる。
  • 屋上露天風呂で、港の灯りが滲むまで、あえて何も話さずに浸かってみる。