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湯気に消えた、小さな指先の温度

湯気に消えた、小さな指先の温度

心に刻まれた、五つの旅の音

1. 襖が滑る乾いた「スッ」という音。それと同時に、「たーだーい!」という子供の弾けるような声が、静かな和室に響き渡った。い草の清々しい香りが鼻をくすぐり、裸足で触れる畳の心地よい硬さが、日常を脱ぎ捨てたことを実感させる。旅の始まりはいつも、こうした予測不能な騒がしさと、胸の高鳴りから始まるのかもしれない。

2. 家族風呂の檜から立ち上る濃厚な木の香りと、お湯が肌にまとわりつく「とろり」とした音。子供が「お湯がねばねばしてる!」とはしゃぎ、舞い上がった温かい飛沫が頬に触れる。石風呂のずっしりとした熱気が、凝り固まった肩の力をゆっくりと解きほぐしていく。大人の疲れが、湯気に溶けて排水口へと流れ落ちていった気がした。

3. 懐石料理の器が、畳の上に静かに置かれる「コツン」という小さな音。地元の秋を凝縮した色彩豊かな料理が並び、大人が「これ、何の魚だろうね」と真剣な面持ちで問いかける。正解を導き出すことよりも、一緒に不思議がる時間こそが、何よりの贅沢に感じられた。口いっぱいに広がる出汁の深い温かさが、家族の会話をさらに柔らかく、親密なものに変えていく。

4. ベランダのカーテンが、11月の冷たい夜風に揺れる「サササ」という音。眼下に広がる別府の夜景は、まるで誰かがこぼした宝石箱のように煌めいていた。隣に立つパートナーの肩が小さく震えているのに気づき、そっと寄り添う。言葉を交わさなくても、同じ温度の夜を共有しているという安心感が、心に深く染み渡る。ここ、「眺望の宿しおり」で過ごす時間は、忘れかけていた静かな愛情を思い出させてくれる。

5. 深夜、布団の中で聞こえる、規則正しい小さな寝息。さっきまであんなに騒いでいたのが嘘のように、濃い静寂が部屋を支配する。指先で触れる布団の柔らかさと、身体を包み込む心地よい重み。この静けさこそが、一日中「親」というチームとして戦い抜いた私たちへの、最高のご褒美なのだとふと気づかされた。

窓の外では、秋の夜風が別府湾のさざなみを運んでいた。

  • 家族風呂には檜と石の二種類があり、その日の気分や好みの温度に合わせて選べるのが魅力です。
  • 眺望の宿しおりの海側のお部屋からは別府の街並みと海が一望でき、心まで開放される贅沢な時間を過ごせます。