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コンビニの袋が、静寂を少しだけ乱した夜

コンビニの袋が、静寂を少しだけ乱した夜

真夜中の空腹を誘った、あの静かな共犯関係

指先の感覚がじわりと消えていくような、刺すような冷気だった。一月の下呂温泉街は、吐き出す息が瞬時に白く凍りつき、街灯の淡い光が深い霧に滲んで、まるで水底を歩いているかのような錯覚に陥る。どこからか漂う温泉特有の硫黄の香りが、冬の夜気と混ざり合って鼻腔をくすぐっていた。「下呂温泉 こころをなでる静寂 みやこ」へと戻る道すがら、私たちは誰が最初に「何か食べない?」と囁いたのか、今でも正確に思い出せない。ただ、コンビニの自動ドアが開いた瞬間に鳴り響いた、あの乾いた電子音と、外の闇とは対照的な、不自然なほどに白い蛍光灯の光が、妙に現実味を帯びて記憶に刻まれている。プラスチックの袋が夜風に煽られてガサガサと騒がしく鳴る音が、静まり返った温泉街に不釣り合いに響いていた。明日早起きして初詣に行くという、どうせ守られないであろう淡い約束を交わしながら、私たちは地元の銘菓と、とりとめもないスナック菓子をいくつか買い込んだ。足元の雪が、踏みしめるたびにギュッ、ギュッという低い音を立てる。その単調なリズムが、心地よい密談のような親密さを運んできた。

畳の上で、正論という名の鎧を脱ぎ捨てる時間

「ねえ、ぶっちゃけ明日の早起きなんて、今の私たちに無理じゃない?」

部屋に入った瞬間、暖房の柔らかな温もりが、冷え切った肌に心地よくまとわりついた。私たちは、客室「玉響TAMAYURA」の広い畳の上に、コンビニの袋を乱暴に広げた。シモンズ製マットレスの吸い込まれるような心地よさに一度身を任せてしまえば、もう誰も立ち上がりたくないのが本音だったはずだ。

「だって、朝の5時に起きるなんて正気じゃないし。そもそも誰がそんな完璧なプランを立てたっけ」
「まあ、プランを立てたこと自体が、私たちの最大のミスだったよね」

そう言って笑い合いながら、濃厚な旨味の飛騨牛ジャーキーを口に運ぶ。噛みしめるたびに広がる肉の濃い味わいと、温かいお茶から立ち上る白い湯気が、私たちの顔をぼんやりと隠した。この瞬間、私たちは何かを共有しているというよりは、お互いの「ダメな部分」をさらけ出し、それを笑い飛ばすという贅沢な作業に没頭していた。それはまるで、熱いお湯の中に塩を放り込んだときのように、鋭かった個々の輪郭がゆっくりと溶け出し、境界線が曖昧になっていく感覚に似ていた。誰が正解で、誰が間違っているか。そんな世俗的な正論は、この部屋の静寂の中では何の価値も持たなかった。

「あ、見て。このお菓子の袋、全然開かないんだけど!」

必死に袋と格闘していた友人が、勢い余って中身を畳の上にぶちまけた。ポロポロと転がる小さな菓子たち。その情けない光景に、私たちは同時に吹き出した。普段なら「ああ、もう!」とため息をつく場面かもしれないけれど、ここではその不器用ささえ、最高に贅沢なエンターテインメントに感じられた。結局、私たちは初詣に行くことよりも、このまま畳の上で、とりとめもない話を夜通しすることに賭けることにした。

飽和した会話のあとに訪れる、濃密な空白

お菓子が尽き、言葉も自然と途切れた。部屋の中に、心地よい空白がゆっくりと広がっていく。離れの客室だからこそ味わえる、外部から完全に遮断された濃密な静寂だ。時折、遠くで冬の風が建物の隙間を通り抜けるヒューという低い音が聞こえるが、それがかえって、この空間の絶対的な安全さを際立たせていた。裸足で踏みしめた無垢材の床の温度が、ちょうどよく、しっとりと肌に馴染む。深夜3時の静寂には、ある種の心地よい重さがある。それは孤独というよりも、自分たちがここにいてもいいのだという、静かな肯定感に近いものだった。私たちは、もう何も話さなかった。ただ、隣に誰かがいて、同じ温度の空気を吸っているということだけを確認するように、ゆっくりと深い呼吸を繰り返した。完璧に計画された旅よりも、こういう、予定が心地よく崩れたあとの空白の時間にこそ、本当の意味での「旅」が潜んでいる気がする。下呂温泉 こころをなでる静寂 みやこの静謐な空気が、私たちの心をゆっくりと解きほぐしていった。

窓の外では、誰にも気づかれずに雪が降り積もっていた。

  • 下呂の地酒と一緒に楽しむ、濃厚な飛騨牛のジャーキー
  • 温泉街のコンビニで、あえて選ぶ「地元の限定銘菓」