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袖口からこぼれた、小さな笑い声

足の裏に伝わる、厚手のカーペットのぎゅっとした弾力。老二が廊下を全力で走るたびに、小さな足音が絨毯に吸い込まれ、かすかな振動だけが心地よく足裏を叩く。廊下にはほのかに木の香りが漂い、子供の弾けるような呼吸音が静かな空間に響いていた。私はそのリズムを聴きながら、彼が曲がり角でバランスを崩しそうになる瞬間を、微笑ましく待っていた。結局、彼は壁に軽くぶつかったけれど、そのまま転げ回って笑っていた。完璧な行儀良さなんて、この場所には必要ない。ただ、その不格好な動きが、冷えかけた空気に心地よい体温を運んでくる気がした。


湯船に肩まで浸かった瞬間、皮膚の表面がわずかにピリつくような、心地よい刺激。でもすぐに、芯まで熱が浸透し、肩にずっと乗っていた見えない重荷が、お湯の中にゆっくりと溶け出していく。大江戸温泉物語Premium 下呂本館の湯は、絹のように滑らかで、自分という輪郭を少しずつ曖昧にしてくれる。露天風呂付き部屋のプライベートな空間で、立ち上る白い湯気に包まれていると、「ここでは誰かの親である前に、ただのひとつの生命体として呼吸していいのだ」と、深い安堵感に満たされた。
バイキング会場に満ちているのは、金属製のトングが皿に触れるカチャカチャという乾いた音と、子供たちの高すぎる笑い声。老二は「全部食べるんだから!」と宣言し、皿の上に山のような盛り付けをしていた。老大はそれに呆れながらも、さりげなく彼のお皿から苦手な野菜を自分の皿に移している。そんな、名前のないチームワークのような光景。賑やかすぎて耳が疲れそうになるけれど、その喧騒こそが、家族という不揃いなパズルのピースがぴったりと組み合わさっている証拠なのだろう。
口に入れた瞬間、飛騨牛の白い脂が体温でさらさらと溶けていく。濃厚な甘みが舌の上に広がり、鼻から抜ける香ばしい匂いが、脳の深いところにある「満足感」というスイッチを静かに押した。子供たちが口の周りをソースだらけにして、それでも幸せそうに頬張っている。味覚というものは、記憶と密接に結びついている。数年後、ふとこの濃厚な脂の温度と、鼻をくすぐった香ばしさを思い出したとき、私はきっとこの騒がしくも温かい食卓の風景を同時に思い出すことになるだろう。
五月の光は、洗いたてのガラスのように透明度が高い。窓の外に広がる鮮やかな新緑が、白い障子に淡い緑色の影を落としていた。時折、風に揺れる藤の花が、視界の端に淡い紫色の残像を残していく。光と影がゆっくりと入れ替わる様子を眺めていると、心の中に溜まっていた澱のようなものが、水に滲むインクのように、柔らかく広がって消えていく。何かを解決しようとするのではなく、ただそこに在ることを許される時間。そんな贅沢な静寂が、ここにはあった。
子供用の浴衣の、少し硬い綿の質感。老二がそれを身に纏ったとき、袖口から小さな手が完全に見えなくなっていた。彼はそれが気に入ったようで、浴衣をマントのように翻して、部屋の中をヒーローのように飛び回っていた。帯がすぐに緩んで、裾を引きずりながら歩く姿。その不恰好さが、たまらなく愛おしい。新品の服を完璧に着せるよりも、少しサイズが合っていない服を着て、誇らしげに笑っている子供の方が、ずっと人間らしくて、美しい気がする。
夜、い草の香りが心地よい畳の上にみんなで転がっている。誰がどこで寝ているのかわからないほどに、体が重なり合っている。規則正しい呼吸の音だけが、部屋の静寂を心地よく埋めていた。もともと孤独というものは、切り離すべきものではなく、誰もが持っている内臓のようなものだと思っていたけれど、こうして誰かの体温を感じながら眠る夜だけは、その孤独さえも温かい毛布のように自分を包んでくれる。私たちはただ、同じリズムで、深く、静かに呼吸をしていた。

明日の朝、目が覚めたときには、また少しだけ違う自分になれているかもしれない。

  • 子供が浴衣をマントにして走り回っても安心な、広めの和室を選んでみてください。
  • バイキングでは、子供と一緒に「一番不思議な色の料理」を探すゲームをすると食事が盛り上がります。