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コンビニの袋がカサつく音が、一番贅沢だった

真夜中の共犯者たちと、禁じられたお菓子の時間

指先に触れる十一月の下呂の空気は、想像以上に鋭く、肺の奥まで凛とした冷気が浸透していくようだった。駅からの道を歩きながら、私たちは誰が一番多くコンビニで買い込むかという、大人の遊びのような、けれど真剣な賭けに興じていた。結果的に全員が正解を出しすぎて、手にしたビニール袋ははち切れんばかりに膨らんでいた。木曽屋 / Kisoya の玄関をくぐる時、私たちはまるで密輸品でも運んでいるかのように、わざと足音を忍ばせて部屋へと向かった。静まり返った廊下に、カサカサという袋の乾いた音が不自然に響き渡る。その音が心地よい緊張感となり、私たちの高揚感をさらに加速させていた。和室の扉を開けて滑り込んだ瞬間、外の刺すような冷気と部屋の柔らかな温もりが混ざり合い、ふわりと藺草の芳しい香りが鼻をくすぐった。そこには、誰にも邪魔されない、私たちだけの秘密基地のような濃密な空間が広がっていた。

咀嚼音に溶けていく、とりとめもない本音の断片

「ちょっと待って、君の浴衣、色使いが激しすぎない? 三十種類もあったのに、なんで敢えてそれをなぞったの」

畳の上にぶちまけられたポテトチップスの塩気と、地元の銘菓の甘い香りが部屋に充満する。誰かがくすくすと笑いながら、私の派手な浴衣の袖を指差した。私はそれをわざと誇張して翻し、畳の感触を足裏に感じながら、「これが旅の正解でしょ。誰よりも目立つのが、この旅のコンセプトなんだから」と茶目っ気たっぷりに返した。もぐもぐと口を動かしながら、私たちは今日一日で目にした紅葉の燃えるような鮮やかさや、畳敷き大浴場で心身を解きほぐした時の、あの肌に吸い付くような感覚について語り合った。下呂の湯は本当に「美肌の湯」なのだろうか、それとも私たちはそう信じたいだけなのか。そんな答えの出ない議論に、深夜のテンションで花を咲かせる。

「っていうか、さっきの卓球、マジでひどかったよね。あんなに空振りする人、人生で初めて見たかも」

「うるさいな。あれはわざとタイミングをずらしただけ。戦略的なミスっていうか、某種のパフォーマンスだよ」

そんなくだらない言い合いが、部屋の四隅に跳ね返って、心地よい残響となって降り積もる。誰かが飲み物をこぼしそうになり、慌ててティッシュで拭き取る。完璧なスケジュールなんて、この瞬間には何の価値もない。むしろ、この計画性のなさが、私たちを一番自由にしてくれていた。もしかしたら、旅の本当の目的は、有名な観光地を巡ることではなく、こうして深夜に畳の上で、お互いのダメなところを笑い合い、心の鎧を脱ぎ捨てることだったのかもしれない。

静寂という名の贅沢な余韻に身を委ねて

最後の一片のチップスが消え、部屋には再び心地よい静寂が戻ってきた。さっきまでの賑やかさが嘘のように、今はただ、障子の向こうで鳴る冬の風の音と、誰かの静かな呼吸だけが聞こえる。会話の残響がゆっくりと消えていく過程は、まるで音楽の最後の一音がゆっくりと減衰していくリバーブのテールのようだった。私たちはそのまま畳の上に大の字になって、古びた木の天井を眺めた。木の節の質感や、微かに聞こえる廊下の足音が、今の私たちにはこの上なく贅沢なBGMに聞こえた。木曽屋 / Kisoya の静謐な空気が、高ぶっていた心をゆっくりと凪の状態へと導いていく。

言葉にしなくても、今のこの空気が正解なのだと分かっていた。誰かと一緒にいるのに、同時に一人でいられる。そんな矛盾した心地よさが、この部屋には満ちていた。もしかすると、孤独とは解消すべき問題ではなく、こうして信頼できる誰かと共有することで、より深い形に昇華されるものなのかもしれない。私たちはもう一度だけ小さく笑い合い、ゆっくりと目を閉じた。明日になればまた、賑やかな旅が始まるけれど、この深夜の静寂こそが、今回の旅で一番大切に持ち帰りたい記憶になるという気がした。

ぬくもりの残る畳の上で、誰かの寝息が静かなリズムを刻み始めた。

  • 飛騨牛の濃厚な旨味が凝縮された、地元のこだわりおつまみセット
  • 下呂の夜を締めくくる、ほんのり甘い地元の和菓子と温かい緑茶