← 回到 箱根蘆之湖王子大飯店

パジャマの裾を掴む、小さな手の温度

パジャマの裾を掴む、小さな手の温度

芦ノ湖の静寂に溶け込んだ、家族の五つの音

指先に触れるアイボリー色のカーペットが、心地よい厚みで足音を柔らかく吸い込んでいる。そこで下の子がプラスチックの車を走らせた時の「コツン」という小さな音。それは、この部屋なら家でのように「静かにしなさい」と急かさなくてもいいという、親としての解放感に似た響きだった。子供たちが自由に床を転がれる十分な余白があることに、私たちはふと、肩の力が抜けるのを感じた。

バルコニーへ出ると、11月の冷たい空気が鋭く頬を刺し、肺の奥まで澄み渡る。乾いた紅葉がガラス窓に当たって「カサカサ」と鳴る音。上の子は、風に舞う葉っぱを一枚ずつ数えようと、小さな指を空に伸ばしていた。その必死な横顔を見ていると、季節が移り変わる速度よりも、この子の成長の速さの方がずっと恐ろしいと感じる。けれど、その不安さえも、この凛とした空気の中では心地よい重みを持って心に沈んでいった。

温泉の湯船に身を委ねると、濃厚な硫黄の香りと共に、お湯が溢れ出す「ザァー」という一定のリズムが耳を包み込んだ。下の子が「このお湯は、湖の底に住むドラゴンが運んできたの?」と、白い湯気に目を細めて不思議そうに聞いてくる。私たちは答えを持っていなかったけれど、視界が白く塗りつぶされている間だけは、その空想が唯一の正解であってもいいと思えた。ちょうど良い温度のお湯が、強張っていた心身をゆっくりと解きほぐしていく。

夜、湖畔の静寂を切り裂いて響き渡った打ち上げ花火の「ドーン」という低い振動。それは耳で聞くというより、胸の奥で共鳴する感覚に近かった。隣で上の子が、驚きと興奮で小さく息を呑む音。暗い空に大輪の花が開くたび、子供たちの瞳に鮮やかな色彩が映り込み、それが私たちの心にも温かな灯をともした。寒さに震えながらも、互いの肩を寄せ合って眺めたあの光景は、きっとこの場所でしか出会えない色だった。

最後は、真っ白なリネンのひんやりとした感触と、そこに家族全員で「ふかッ」と飛び込んだ時の音。重なり合った体温と、次第に規則正しくなっていく寝息。誰がどこにいるのかわからないほどに混ざり合った状態で、私たちは深い眠りに落ちていった。ザ・プリンス 箱根芦ノ湖のレイクビューツインルームで過ごした夜の心地よさは、単に設備が贅沢だからではなく、ここに家族全員でいられるという絶対的な安心感が、心地よい重なりとなって身体に馴染んだからだと思う。

湖の深い青に溶け込むように、家族の記憶が静かに重なっていく。

  • 子供たちが自由に駆け回れるレイクビューツインルームを選び、あえて「何もしない時間」を贅沢に過ごしてほしい。
  • 11月の箱根は想像以上に冷え込むため、家族全員で心地よく過ごせる厚手の羽織ものを用意することをおすすめする。