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指先の冷たさと、誰かの笑い声

指先の冷たさと、誰かの笑い声

「誰が先に凍るか」で賭けをしたけれど、結果は全員の完敗だった。外に足を踏み出した瞬間、氷点下の空気が鋭いナイフのように頬をかすめ、肺の奥まで凍りつかせる。3月だというのに、視界はどこまでも真っ白な冬のままで、期待していた春はどこかで迷子になっているらしい。足元でキュッキュッと鳴る雪の音が、心地よくも残酷に冬の深さを教えていた。



立ち上る真っ白な湯気が眼鏡を瞬時に染め上げ、視界がぼやける。旭川ラーメンの濃厚な醤油スープを一口啜ると、熱い液体が喉を通り、胃のあたりからじわっと体温が戻ってくる。隣で誰かが「あぁ、生き返る……」と、溶け出した氷のような声で呟いた。その安堵に満ちた吐息こそが、どんな調味料よりも贅沢に感じられた。


「見て、桜の開花予想、もう出てるよ」と、誰かが期待に満ちた顔でスマホの画面を突き出してきた。それに対し、私は窓の外に積もる絶望的なまでの雪原を指差し、「この景色を見てからもう一度言って」と静かに返す。あまりに正論すぎるツッコミに、一同は苦笑い。私たちの肌が感じる温度は、気象庁の予報よりもずっと正直で、意地悪だった。


ホテルのロビーに飾られたひな祭りの設えの前で、誰が一番お雛様に似ているかという、大人の遊びに興じた。真剣な面持ちで口角を上げ、不自然なほど背筋を伸ばしてポーズを決める友人の姿が、あまりにシュールで可笑しい。気づけば全員が腹を抱えて笑い転げていた。こんな、後から振り返れば意味のないくだらない時間こそが、旅の記憶に一番深く刻まれる。


サウナの濃密な熱気の中で、凝り固まった思考がゆっくりと溶け出していく。肌を刺すような熱さと、その後に飛び込む水風呂の、心臓が跳ね上がるほどの衝撃。静寂が耳の奥まで満たされ、自分の中に溜まっていた日常のノイズが、激しい温度差によって綺麗に洗い流されていく。もしかしたら、これが本当の意味での「休息」というものなのかもしれない。


OMO7旭川 by 星野リゾートのスタジオルームにあるベッドに、そのまま深く沈み込む。洗い立てのリネンのひんやりとした感触と、身体を優しく包み込む雲のような柔らかさ。深夜3時の静寂は、心地よい重みを伴って部屋を満たしている。窓の外の凍てつく世界とは対照的な、温もりに満ちた空間。明日もまた、この仲間たちと笑い合えるという安心感が、心地よい眠りを誘った。


買物公園をあてもなく歩いていたとき、ふと足元に小さな芽を見つけた。まだ世界が灰色に塗り潰されている中で、そこだけが頑固なまでに鮮やかな緑色をしていた。誰が最初に見つけるか競争していたはずなのに、結局はみんなで同時に気づき、「あった!」と声を上げた。小さな生命の勝利を分かち合う瞬間、心の中にぽっと小さな灯がともった気がした。


カレンダーに記された数字と、肌が直接感じる温度の決定的なズレ。その心地よいラグこそが、旅の正体だったのかもしれない。春分を待ちわびるもどかしさと、冬にしがみつきたい贅沢さ。私たちはまだ、真っ白な冬の中にいた。けれど、それで十分だった。この不完全な季節の隙間にこそ、忘れられない時間が流れていたから。

溶けかけの雪の上に、寄り添うように並んだ誰かの足跡。

  • OMOレンジャーの街歩きツアー、マジでおすすめ。地元の人しか知らない路地裏の秘密が見れるよ。
  • サウナ後の〆パフェは絶対外さないで。あの極端な温度差こそが、旭川の正義だから。