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浴衣の裾を引いて歩く、小さな足音

浴衣の裾を引いて歩く、小さな足音

湿った空気の重みが、肌にぴたりと張り付く。8月の函館は、どこか懐かしい潮の香りが漂い、風が吹くたびに海の深い呼吸が聞こえてくるようだった。ロビーに足を踏み入れた瞬間、心地よい冷房の冷気と外の熱気が混ざり合い、一瞬だけ意識が心地よくぼんやりと霞んだ。チェックインを待つ間、次男がふと「海は、世界で一番大きなプールなの?」と問いかけてきた。私たちは答えに詰まり、ただ顔を見合わせて小さく笑った。完璧な旅なんて、最初から期待していなかった。けれど、この不確かな空気感こそが、新しい物語の始まりなのだと感じた。

なぜ、この場所を家族の目的地に選んだのだろうか

足の裏に触れるカーペットの、しっとりと厚みのある感触が心地いい。イマジン ホテル&リゾート函館 / Imagine Hotel & Resort Hakodateの「ラグーン」のお部屋に案内されて、まず心に飛び込んできたのは、圧倒的な「余白」だった。家族旅行というものは、往々にして誰かの小さな我慢で成り立っている。長男がやりたいことと、次男がやりたいこと。そして、大人が「こうあってほしい」と願う理想のスケジュール。それらがぶつかり合うとき、空間の狭さはそのまま心の狭さになり、些細なことで言い争いが始まる。けれど、ここにある開放的な空間は、そんな家族の小さな摩擦を静かに吸収してくれる、穏やかな港のような気がした。荷物を広げ、子供たちが歓声を上げて走り回り、誰かが飲み物をこぼしても、まだ十分なスペースが残っている。その物理的な余裕が、不思議と心に「ま、いいか」という心地よい諦めと寛容さを運んできた。誰がここを選んだのかはもう記憶の彼方にあるけれど、この広さが、私たちを「家族」という一つのチームとして、緩やかに、けれどもしっかりと繋ぎ止めてくれたのかもしれない。

子供たちが一番心を奪われたのは、意外な場所だった

カチッ、カチッという、プラスチックがぶつかる乾いた音。ホテル内のゲームルームにあるファミコン道場で、長男がかつてないほど真剣な表情でコントローラーを握りしめていた。今の時代のゲームのような鮮やかな色彩や立体感はないけれど、そこに流れる懐かしい8ビットの電子音が、静かな熱狂を連れてくる。横で不思議そうに見ていた次男が、「これ、お父さんが子供の頃にやってたやつなの?」と、目を輝かせて尋ねた。その瞬間、私たちは世代を超えた、ある種の共犯関係に入ったような心地になった。操作方法がわからず、キャラクターが壁にぶつかっては何度もやり直す。その不器用な繰り返しに、私たちは声を上げて笑い合った。豪華な設備や最新の玩具よりも、こういう「古くて不便なもの」に触れたときの、子供たちの純粋な好奇心がたまらなく愛おしい。彼らの瞳に映る世界は、大人が見落としてしまうような小さなディテールに満ちている。ふとゲームの画面から目を離し、窓の外を見たとき、ちょうど夕暮れの光が海を濃いオレンジ色に染め上げていた。室内の賑やかな喧騒と、外に広がる静寂のコントラストが、何にも代えがたい贅沢な時間として胸に刻まれた。

帰る頃、心に何が残っているだろうか

露天風呂の白い湯気に包まれながら、遠くに見える海をぼんやりと眺めていた。お湯の温度がちょうどよく、日々の生活で張り詰めていた肩の力が、潮の流れに溶け出すようにゆっくりと抜けていく。8月の夜風は少しだけ冷たく、それがかえって、肌を包むお湯の温もりを鮮やかに際立たせていた。その後、さらりとした浴衣に着替えて外に出ると、夜空に大輪の花火が咲いた。腹の底まで響く轟音が体に伝わり、子供たちが歓声を上げる。その賑やかな喧騒の中で、ふと、彼らの小さな手が私の手をぎゅっと握ったのがわかった。特別な言葉は交わさなかったけれど、その手の温度だけで、十分だったと思う。豪華なバイキングの味や、観光地の絶景よりも、きっと記憶に残り続けるのは、こういう名もなき瞬間だ。誰かが誰かを想い、ただ隣にいたという静かな事実。それこそが、この旅が私たちにくれた本当の成果なのだろう。イマジン ホテル&リゾート函館 / Imagine Hotel & Resort Hakodateで過ごした時間は、家族の絆を再確認させてくれる、穏やかな潮風のようなひとときだった。

濡れた足跡をつけたまま、子供たちがベッドに飛び込んだ。

  • 函館市熱帯植物園までゆっくり歩いてみる。子供と一緒に、流れる時間を忘れる贅沢を共有してほしい。
  • バイキングでは地元の旬の食材を少しずつ。子供が「美味しい」と笑う顔を、ゆっくりと眺めてほしい。