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パジャマの裾を掴んで、もう一度だけ

パジャマの裾を掴んで、もう一度だけ

車を降りた瞬間、肺の奥まで突き刺さるような冷たい空気が流れ込んできた。十月の新得は、すでに冬の入り口に立っている。後部座席では「どっちが先にホテルに入るか」という、大人から見れば些細な、けれど彼らにとっては死活問題な言い争いが始まっていた。私たちは優雅な家族旅行を計画していたはずだったが、実際には、全員を時間通りに車から降ろすだけで、まるで緻密なチーム作戦を遂行しているかのような緊張感に包まれている。

けれど、その騒がしさが不思議と心地よい。それはきっと、周囲を囲む深い森が、すべての雑音を優しく吸収してくれる静謐さを湛えているからだろう。サホロリゾートホテルに足を踏み入れると、外の刺すような寒さは消え、ロビーにはどこか懐かしい木の香りと、柔らかな暖炉の温もりが漂っていた。

案内されたコンフォートルームのドアを開けたとき、まず私を捉えたのは、心地よい「空白」の感覚だった。合成洗剤の匂いが一切ない、丁寧にクリーニングされたリネンの、少しだけ硬くて清潔な手触り。子供たちが靴を脱ぎ捨ててベッドに飛び込む鈍い音が、部屋の隅々まで柔らかく響き渡る。ここは単なる宿泊施設ではなく、私たちの乱雑なエネルギーをまるごと包み込んでくれる、大きな器のような場所だった。窓の外に広がる十勝の大自然が、私たちの日常という殻をゆっくりと剥がしていくのがわかった。

森の静寂と家族が触れた、五つの記憶

テンピュール枕:頭を預けた瞬間、ゆっくりと、けれど確実に身体が沈み込んでいく感覚。まるで深い雲に抱かれているかのような心地よさに、一番上の子が「魔法の枕だ!」と歓声を上げ、そのまま深い眠りに落ちた。

ボディソープの香り:指の間で泡立てると、雨上がりの森を歩いているような、湿り気を帯びたグリーンの香りが広がった。ギルクリスト&ソームズの洗練された香りに、末っ子が「お風呂なのに外の匂いがする」と不思議そうに鼻をひくつかせていた。

部屋の空気:スウェーデン製のオキシジェンで清浄された空気は、驚くほど「軽い」。深く呼吸をするたびに、肺の中まで透明に洗われるような感覚に、真っ先に気づいたのは私だった。子供たちの騒ぎ声さえも、この澄んだ空気の中では心地よいリズムに聞こえる。

窓の外の紅葉:十月の新得の森が、燃えるような赤と黄色に染まり、視界を埋め尽くしていた。次男が冷たい窓ガラスに額をぴたっと押し付け、「あそこの赤い葉っぱ、僕が取ってきていい?」と問いかけてきた。ガラス越しに伝わる冷たさと、外の鮮やかな色彩のコントラストが、記憶に深く刻まれた。

大きすぎるバスローブ:厚手の生地が床に擦れる、かすかな衣擦れの音。自分のサイズよりずっと大きいバスローブを羽織り、それをマントに見立てて廊下を走り回る末っ子。裾を引きずりながら「スーパーヒーロー」になりきった彼の笑い声が、ホテルの静寂を心地よく乱していた。

十勝の青い月明かりの下、私たちは誰が誰だかわからないまま、ひとつの大きな塊になって眠った。

  • 子供たちが寝静まった後、一人で温泉に浸かり、森の静寂に耳を澄ませる贅沢な時間を。
  • 早朝、まだ誰も歩いていないホテルの外を散歩し、冷たい空気の中で森が目覚める音を聞いてほしい。