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花火の音が、三秒遅れて届いた夜

花火の音が、三秒遅れて届いた夜

濡れたアスファルトの、あの独特な土っぽい匂い。誰かのサンダルが片方脱げた、パチャッという情けない音。私たちは密かに賭けていた。誰が一番最初に「疲れた」と口にするか。結果、車を降りて五分で、全員が同時に深くいため息をついた。湿った風が頬を撫で、期待通りの展開に私たちはただ笑い合った。



氷をたっぷり入れた、黄金色の冷たいトウモロコシのスープ。舌に触れた瞬間の、暴力的なまでの甘さが脳を突き抜ける。サホロリゾートホテルでの食事は、効率や作法なんてどうでもよかった。ただ「今、美味しい」という原始的な感覚だけが支配する時間。それが、何よりの贅沢だった気がする。


「このデラックスツインルーム、広すぎない?」誰かが呆れたように言った。けれど結局、私たちはベッドの真ん中に身を寄せ合い、コンビニで買い込んだお菓子を広げた。ラグの上に散らばるポテトチップスの破片と、賑やかな笑い声。高級感という言葉を全力で無視する快感に、私たちは心地よく浸っていた。


ドライヤーの風力が、信じられないほど弱かったこと。温い風が、なだめるように髪を揺らす。あれはきっと、「もっとゆっくり時間を使いなさい」というサホロリゾートホテルからの高度なメッセージだったに違いない。三人がかりで笑いながら、いつまで経っても乾かない髪をなびかせていたあの時間は、客観的に見てかなり滑稽だったはずだ。


指先で触れたテーブルの、ざらりとした木の質感。十勝の森が育んだ家具だという話を聞いたけれど、それよりも、ただその温度がしっとりと心地よかった。深夜、誰かが静かな寝息を立て始めた頃、部屋の中には深い静寂が満ちていた。その静けさが、心地よい重さを持って肌に張り付いていた。


テンピュール枕に顔を埋めたとき、世界からすべての音が消えた気がした。耳に届くのは、自分の心拍音と、遠くで鳴る虫の声だけ。窓の外には、八月の北海道の、ひんやりとした夜気が張り付いている。自分がどこにいるのか分からなくなるような浮遊感。そのまま夜の闇に溶けてしまいたかった。


夜空に大輪の花が咲いた。光が視界を塗りつぶしてから、ドォンという重い音が地響きのように胸に届くまでの、あの奇妙な空白。光と音の時間差。私たちはその空白に、誰が先に声を出すか、またくだらない賭けをしていた。正解は、あまりの美しさに誰一人として声を上げられなかったことだ。


朝、カーテンを開けると、目に飛び込んできたのは暴力的なまでに濃い緑色の森。まだコーヒーを飲む前の、意識が半分だけ眠っている時間。シーツの冷たさと、肌に残る温泉のぬくもりの境界線。ここに来る前の、慌ただしい日常を過ごしていた自分たちが、なんだか遠い国の住人のように感じられた。

誰のサンダルが消えたのか、結局最後までわからなかった。

  • 温泉の後に飲む冷たい牛乳。あれは人生の正解だと思う。
  • ベア・マウンテンで熊と視線を合わせるスリル、ぜひ味わって。