← 回到 Chateraise Gateaux Kingdom Sapporo

温度を確認し忘れた、あの日のプール

送迎バスのドアが、プシューと重い吐息をついて開いた。5月の札幌の空気は、まだ冬の記憶を抱いたまま、頬を撫でるとひんやりと心地いい。私たちは、誰が一番先にホテルの中の「贅沢な匂い」に気づくか賭けていたけれど、結局全員が同時に、甘い砂糖と清潔なリネンの混ざった香りに鼻をくすぐられた。「あーあ、負けだね」と誰かが笑い、私たちは期待に胸を膨らませてロビーへと足を踏み入れた。


朝食バイキングのプレートに、北海道産の真っ赤なイチゴを山盛りにして。フォークで押し潰した瞬間に溢れる果汁の温度が、口の中でゆっくりと広がっていく。シャトレーゼ ガトーキングダム サッポロのケーキは、正直に言って「甘すぎる」かもしれない。けれど、その過剰なまでの甘さが、旅先でだけ許される特権のように感じられて、私たちはわざと一口ずつ、時間をかけて味わっていた。
「ねえ、あなた、泳いでるっていうか、ただ溺れてるだけじゃない?」 プールの水面でバシャバシャと暴れる友人を眺めて、私はわざと意地悪く言った。彼女は激しく水しぶきを飛ばしながら、「これは最新のスタイルなの!」と言い返してくる。鼻をつく塩素の匂いと、高い天井に反響する子供たちの歓声。私たちは大人の振る舞いをどこかに置き忘れて、ただ水の中で誰が一番不格好に泳げるかを競い合っていた。
深夜2時、ゲストルームの照明をすべて消して、コンビニで買った謎のお菓子を分け合った。誰かが言い出した「明日、絶対に10時に起きる」という約束が、この時点で既に絶望的に無理だということが、暗闇の中の静寂から伝わってくる。お互いのひどい寝相を笑い合いながら、心地よい疲労感に身を任せた。そういう、中身のない会話こそが、旅の正解な気がする。
早朝6時。窓を開けると、外には新緑の濃い緑が波のように広がっていた。藤の花がどこかで咲いているのか、風に乗ってかすかに甘い香りが漂ってくる。誰もいない廊下を歩くとき、自分の足音が意外なほど大きく響いて、世界に自分たちだけが取り残されたような錯覚に陥る。孤独ではないけれど、心地よい隔離状態。そんな静寂が、今の私たちには必要だった。
ゲストルームのカーペットは、足首まで埋まりそうなほど厚みがあった。ベッドからバスルームまで、裸足でゆっくり歩くと、ちょうど12歩。タイルの冷たさが足裏に伝わった瞬間、意識がはっきりと覚醒する。このホテルの広さは、単なる面積のことではなく、心の余裕を物理的に作り出してくれる装置のようなものだという気がした。
バウムクーヘンの製造工程を見学したとき、焼き上がったばかりの香ばしい匂いに包まれて、私たちは急に子供のような顔になった。完璧な円を描いて積み重なる層を見ていると、なんだか自分たちが積み重ねてきた、くだらない思い出の層に似ているなと思った。誰にも気づかれないけれど、確実にそこにある、頑固な根っのような繋がり。
チェックアウトのとき、誰が一番最後に「帰りたくない」と言うか、密かに競っていた。結局、誰もそれを口にしなかったけれど、車に乗り込むときの肩の力が抜けた感じが、すべてを物語っていた。新緑がアスファルトの隙間から強引に顔を出すように、私たちの関係も、こういう不器用な旅を通じて、少しだけ形を変えて成長したのかもしれない。

指先に残った、甘いバニラの香り。

  • プールの後は、迷わずサウナへ。あそこで「整う」体験を共有してほしい。
  • 朝食のスイーツコーナーは、胃袋の限界に挑戦する覚悟で挑んでみて。