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白ワインに溶けた、花火の残像

私たちの不格好さを静かに見守っていたものたち

白いリネン:オリエンタルスイートの贅沢な広さに、大の大人が「誰がどこに寝るか」という不毛な領土争いを繰り広げた。指先を滑るひんやりとした綿の感触と、誰かが脱ぎ捨てた靴下の、どうしようもなく生活感のあるコントラスト。その境界線で、私たちは子供のように笑い転げていた。

コーヒーマシン:ラウンジ「セゾン」の片隅で、昨夜の祭りの余韻で思考が停止していた私たちの、絶望的なまでのカフェイン欲求を処理していた。挽きたての豆が放つ、鼻腔を突き抜ける鋭い香りと、シュンと鳴る蒸気の音。カップから立ち上る白い湯気が、ぼんやりとした視界をゆっくりと染めていた。

全身鏡:浴衣の帯がどうしても上手く結べず、「ねえ、これ結び目になってる?」と三人がかりで格闘していた惨状を淡々と映し出していた。布が擦れる乾いた音と、誰かの「もういい、これでいい」という、半分諦め混じりのため息。鏡の中の私たちは、どこか滑稽で、それでいて最高に自由に見えた。

ラウンジの大きな窓:中島公園のリスを誰が最初に見つけるかという、幼稚な賭けに付き合わされていた。ガラス越しに伝わる、7月の札幌の、まだ少しだけ冷たい外気の温度。遠くで揺れる深い緑の濃淡が、私たちの視界をゆっくりと塗り替えていく心地よさに、ただ身を委ねていた。

アイスペール:深夜、コンビニで買い込んだお菓子と飲み物が無造作に詰め込まれ、本音と冗談が混ざり合った会話の重心になっていた。氷が溶けてカチリと鳴る音だけが、時折、沈黙の隙間を埋めていた。冷たい水滴が指先を濡らすたび、「この夜が終わらなければいいのに」と、誰かが小さく呟いた。

もし、これらの物たちが口をきくなら

もし、プレミアホテル中島公園札幌の壁が口をきくなら、私たちのことを「屈折した光の塊」と呼ぶかもしれない。一本の真っ直ぐな光ではなく、プリズムを通った後のように、バラバラな方向に飛び散る騒がしい色彩。私たちは、いわゆる「観光」をしていたわけではなく、ただそこに存在して、たくさん笑って、たくさん言い合いをしていた。部屋の中に充満していたのは、お腹が痛くなるほど笑った後の、あの心地よい脱力感。もしかすると、この部屋は私たちのノイズを気に入っていたのかもしれない。ビジネスホテルとしての静寂を、私たちの不器用な友情が塗り替えていく感覚。それは、誰にとっても正解ではないけれど、私たちにとっては唯一の正解だった気がする。旅とは、目的地に辿り着くことではなく、こういう意味のない時間の中に自分を浸すことだったのだ。結局、リスは一人も見つけられなかったけれど、その空虚さこそが、この旅の輪郭をはっきりさせてくれた。

窓の外で弾けた花火の残像が、グラスの中の白ワインに溶けていた。

  • ラウンジ「セゾン」で、あえて何もせず、ただリスが来るのを待つ時間を。
  • 中島公園まで歩くとき、あえて地図を見ずに、風の吹く方へ曲がってみて。