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濡れた路面電車が、夜の底へ消えていく

濡れた路面電車が、夜の底へ消えていく

私たちの不器用さを静かに見守っていた五つのもの

真鍮のマリンランプ:鈍い金色に光る表面と、指先に伝わるひんやりとした金属の質感。深夜二時、静まり返った部屋の中で「今からイカを食べに行くべきか」という、大人の正気とは思えない議論を繰り広げていた私たちの、ひどく迷走した視線を静かに照らしていた。

真っ白なリネン:パリッとした糊付けの感触と、洗いたての清潔な石鹸の香り。日の出を拝むと豪語して早起きを誓い合った三人が、冬の深い眠りに誘われ、結局正午近くまで泥のように眠り込んだという、救いようのない惨状をすべて記憶している。

ロビーの床:磨き上げられた滑らかな質感と、靴を脱いだ瞬間に伝わる解放感。誰が一番早く靴を履いて外に出られるかという、大の大人がやるにはあまりにくだらない賭けに興じていた私たちの、騒がしい足音と高揚感をすべて吸い込んでいた。

朝食のプレート:陶器のずっしりとした重みと、立ち上る白い湯気に混じる濃厚なバターの香り。最後の一つになった地元の味を巡って、言葉こそ交わさないが、静かで激しい視線のぶつかり合いが起きていたあの緊張感を、皿の上の温度として覚えている。

窓ガラス:指先に張り付くような凍てつく冷たさと、街の灯りが滲む幻想的なぼやけ。路面電車が五分間に何台通り過ぎるかで賭けをしたとき、私たちの吐息で白く曇り、外の景色を遮っていた。結局、誰も正解を当てられなかったあの気まずい沈黙を、ガラスはただ静かに反射していた。

記憶の断片たちが囁く、私たちの不器用な旅路

ウェルカムアロマの柔らかな香りが、鼻腔をそっと撫でる。それはまるで、旅の緊張した心を解きほぐすための、目に見えない薄い毛布のような感覚だった。ホテルリソル函館に足を踏み入れたとき、私たちはどこかで「完璧な大人の旅」を演じようとしていた。けれど、現実は残酷で、そして可笑しい。誰かが充電器を忘れ、誰かが地図を読み間違え、結局は計画していた場所の半分にも辿り着けなかった。

「もういいよ、適当に行こう」

誰かが漏らしたその一言が、合図だった。モダレットダブルの心地よいベッドに身を沈め、外から聞こえる路面電車のガタゴトという振動をBGMに、私たちはただ笑い転げた。JR函館駅から歩いて三分。頬を打つ11月の冷たい風が、かえって私たちの体温を際立たせ、お互いの存在を確かめ合わせていた。

私たちは、お互いの欠落を埋め合うのではなく、その欠落があるからこそ笑い合える関係だった。豪華な設備や完璧なスケジュールよりも、深夜にどうでもいい話で盛り上がった時間の方が、ずっと深い色彩を持っている。感情には重さがあり、共有した笑い声には形がある。この部屋の壁は、きっと私たちのそんな、かっこ悪くて愛おしい時間を、心地よいノイズとして記録していたはずだ。目的地に辿り着くことよりも、誰と一緒に迷子になるかの方が、ずっと重要だったのだと、今ならわかる。

窓の外では、宝石のようなイルミネーションが、冷たい夜気の中で静かに震えている。

  • 朝の冷え込みが厳しいので、領事館まで歩くときは、あえて少し厚手の靴下を履いていくことをおすすめします。
  • 朝食の「Eatwell Breakfast」では、管理栄養士さんのアイコンを無視して、直感で一番美味しそうなものを盛り付けてみてください。