凍てつく街で家族が分け合った、五つの記憶の断片
回転ドアの温もり
JR帯広駅のホームに降り立った瞬間、肺の奥まで凍りつくような鋭い冷気に襲われた。上の子は「もう無理」と泣きそうになり、下の子は帽子を飛ばされそうになって右往左往。そんな混乱の中、ホテル日航ノースランド帯広の重厚な回転ドアに滑り込んだとき、肌を撫でたのは暴力的なまでの暖かさだった。外の氷点下の世界と、室内の柔らかな温度の間に生まれる数秒間の空白。その心地よいラグに、張り詰めていた肩の力がふっと抜ける。凍えて真っ赤な鼻をした下の子が、一番に「あー、あったかい」と小さく呟いた。
朝食ブッフェの白い湯気
朝7時、まだ半分眠っている目でレストランへ向かう。十勝の乳製品が放つ、濃厚で甘い香りが鼻をくすぐり、胃袋を優しく刺激した。プレートの上に誰が一番多く料理を盛り付けられるかという、静かな、けれど激しいチーム戦が始まる。上の子は、見たこともない色のお野菜に慎重にフォークを伸ばし、下の子はパンケーキの山を築くことに全力を注いでいた。私は、温かいスープを口に含んだとき、ようやく自分がここにいることを実感した。十勝の恵みという言葉よりも、ただ単に「お腹が空いていた」という本能に救われる瞬間。一番に「美味しい!」と叫んで、周りの客を少しびっくりさせたのは、もちろん下の子だ。
大きすぎる白いスリッパ
重いブーツを脱ぎ捨てて、部屋に用意されていた白いスリッパに足を滑り込ませる。その瞬間、足裏に伝わるカーペットの密やかな柔らかさと、スリッパの心地よいサイズ感。上の子はわざとスリッパを脱ぎ捨てて裸足で走り回り、下の子は自分の足よりずっと大きいスリッパを履いて、ペンギンのように左右に揺れながら歩いていた。廊下で「シャッ、シャッ」と鳴るその乾いた音を聞きながら、私はふと思った。家ではこんなに騒がしくないのに、ここではこの喧騒さえも、旅の心地よいBGMになる。スリッパを履いたままベッドに飛び込もうとして、親に怒られたのが上の子だった。
窓の外に広がる静寂の白
部屋の窓から眺める帯広の街は、すべてが白い静寂に包まれていた。1月の十勝の空は、吸い込まれそうなほど深いコバルトブルーで、そこに降り積もった純白の雪が鮮やかなコントラストを際立たせている。外はあんなに寒くて、風が吹き荒れていたはずなのに、分厚いガラス一枚隔てたこちら側は、驚くほど静かだ。下の子が窓にぴたっと顔を押し付け、「あ、あそこに小さい人がいる!」と指差した。遠くを歩く誰かの孤独なシルエットさえも、この部屋の温もりのなかで眺めていると、なんだか愛おしく感じられた。この静寂の心地よさに気づいたのは、誰よりも早く、窓辺に寄りかかっていた私だった。
洗いたてのタオルの香り
お風呂上がり、肌に触れたタオルの、かすかに漂う清潔な石鹸の香り。冷え切った体で湯船に浸かり、それからふかふかのタオルに包まれる。その心地よさは、まるで大きな繭の中に守られているみたいだった。上の子が、バスローブをマントのように羽織って「私は雪の国の王様だ」と宣言し、部屋の中を堂々と行進し始めた。その滑稽で、けれど誇らしげな姿を見て、私たちは同時に笑い出した。完璧なスケジュールなんて、最初からどうでもよかった。ただ、この柔らかいタオルと、家族の笑い声があればそれで十分だ。最後に、私の背中をポンと叩いて「パパも王様になって」と笑ったのは、下の子だった。
窓の外で雪が降り積もる音が聞こえる気がして、私たちはもう少しだけ、この温もりに甘えることにした。
- 駅直結なので、外の寒さに耐える時間を最小限に。子供連れなら、チェックイン後の「スリッパタイム」を全力で楽しんでほしい。
- レストランでの朝食は、早めの時間を。十勝の濃厚なミルクをゆっくり味わう時間は、大人の特権だと思う。