← 回到 La'gent Stay 函館站前

カップの湯気が駅の灯りをぼかした

カップの湯気が駅の灯りをぼかした

5年後の私たちへ。覚えているかな、名前を忘れるほど凍てついたあの函館の空気を。鼻先を真っ赤にして、互いの情けない顔を見て笑い合ったこと。あの刺すような寒さがなければ、あんなに肩を寄せ合って歩く必要もなかったのかもしれないね。

5年後もきっと鮮明に残っている4つの断片

駅からの徒歩1分という残酷な距離
JR函館駅の中央口を出た瞬間、目に見えない壁のような冷気に叩きつけられた。「誰が先に泣き出すか賭けよう」なんて冗談を言い合いながら、私たちは逃げるようにラ・ジェント・ステイ函館駅前のエントランスへ滑り込んだ。温かな光と、どこか懐かしい木の香りに包まれ、冷え切った皮膚が熱気に触れてピリピリと疼くあの感覚は、今も指先に刻まれている。

トレイン&オーシャンビュールーム<宙船>の窓に張り付いた結露
最上階から見下ろす駅構内を、列車が凍った川を泳ぐ銀色の魚のように静かに横切っていく。窓ガラスに溜まった白い結露を指先でなぞると、外の景色が水滴に溶けて歪んでいった。「世界が溶けてるみたいだね」と誰かが呟いた。指先に伝わるガラスの冷たさと、対照的な室内の暖かさ。重力に負けてゆっくりと滴り落ちる雫を、私たちはただ黙って眺めていた。

天然温泉の湯気に溶けて消えた、くだらない言い争い
脱衣所の凛とした冷気から、熱い湯の中へ。肌にまとわりつく水の重みが、心地よく心まで解きほぐしていく。「誰が一番長く潜っていられるか」なんて、大人のすることとは思えない議論をしながら、白い湯気に包まれた。心地よいお湯の流れる音と、ほのかに漂う温泉の香りが、旅の疲れを丁寧に洗い流してくれる。結局誰が勝ったかは誰も覚えていないけれど、それが正解だった。

バー「ソブリン」で撮った、最高に不格好な集合写真
帆船の船内に迷い込んだような重厚な木の香りと、芳醇なウィスキーの匂い。大人の雰囲気に酔いしれて格好をつけた瞬間、誰かが盛大にくしゃみをした。結果、全員がひきつった顔をしたホラー映画のような一枚が完成し、深夜まで笑い転げた。琥珀色の照明に照らされた、最高に不格好な笑顔。あの弾けるような時間は、きっとこのホテルの壁に深く染み込んでいるはずだ。

5年後の封筒を開けたときに思い出すこと

たぶん、食べたものの味は忘れている。けれど、ラ・ジェント・ステイ函館駅前のベッドに潜り込んだときの、リネンのひんやりした感触と、その後に訪れる圧倒的な安心感は覚えているだろう。深夜3時、街が深い眠りに落ちたあとの、真空のような静寂。洋風建築の重厚さと和の風情が混ざり合うこの空間で、私たちは「素の顔」を取り戻していたのかもしれない。完璧な計画を立てたけれど、結局はすべてが予定外に転がっていった。でも、そのズレこそが、私たちが一緒にいた証拠だったのだと思う。

玄関先に並んだ、少し湿ったブーツの列。

  • トレイン&オーシャンビュールーム<宙船>に泊まるなら、窓の外の列車の動きをぼーっと眺める時間を15分だけ作ること。
  • バー「ソブリン」では、あえて一番複雑そうなカクテルを頼んで、その味の正体について議論すること。