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お風呂上がりのアイスが、少しだけ溶けていた

お風呂上がりのアイスが、少しだけ溶けていた

「ねえ、あのでっかい箱はどこに行くの?」

末っ子が窓に張り付いて指差したのは、ラビスタ富良野ヒルズの目の前に広がる貨物駅のコンテナだった。観光パンフレットに踊る色鮮やかなラベンダー畑のような華やかさはない。けれど、冷たい金属がぶつかり合う乾いた衝撃音が、11月の澄み切った静寂に心地よく混ざり合っている。私たちはその無機質な風景を眺めながら、これから始まる旅が、きっと予定通りにはいかないだろうなと予感した。

家族での旅行というのは、ある種の不器用なチーム作戦のようなものだ。誰かが靴下を脱ぎ捨て、誰かがお菓子の袋をこぼし、小さな言い争いが起きる。それでも最後には、同じ方向を向いて笑い合える。そんな、少しだけ騒がしくて、けれどひどく温かい時間の積み重ねこそが、旅の正体なのだと思う。

富良野駅からホテルまで歩くわずか3分間。空気は刺すように冷たく、肺の奥まで洗われるような感覚があった。しかし、ラビスタ富良野ヒルズの重厚な扉を開けた瞬間、現代的な洗練された空間と共に、どこか懐かしく包み込むような温もりが私たちを迎え入れた。それは、外の世界の厳しさから切り離された、私たちだけの小さなシェルターに入ったような心地だった。豪華な設備に目を奪われることよりも、裸足で踏みしめたフロアの温度がちょうどよかったこと。そんな些細な触覚の記憶が、旅の輪郭を深く刻んでいく。

家族というチームで見つけた、5つの断片

貨物コンテナの金属音
ガチャン、という重い衝撃音と、規則的なリズム。リゾート地の静寂を心地よく切り裂く、生きている街の呼吸のような音に、一番上の子が最初に気づいた。私たちはそれを旅のBGMにして、ゆっくりと荷物を解いた。

九階の大浴場から望む十勝岳
肌を刺す冷気から逃れ、熱い湯に身を委ねた瞬間。立ち昇る白い湯気で視界がぼやけるが、ふっと晴れた瞬間に現れた鋭い山の稜線に、私が最初に気づいた。山が静かに呼吸しているように見え、心に溜まっていた強張りが、お湯に溶け出すように消えていった。

夜食のラーメンから立ち昇る湯気
深夜、お腹を空かせた末っ子が「無料!」という文字を見つけて大はしゃぎした。醤油の香ばしい匂いと、手のひらに伝わる丼の熱。冷え切った指先がじわじわと温まっていく感覚は、どんな高級料理よりも贅沢な充足感に満ちていた。

ぶかぶかの浴衣の裾
子供たちが浴衣に袖を通すと、裾が長すぎて、歩くたびに床をさらさらと擦る。その滑稽で愛らしい様子に、パートナーが最初に気づいた。小さな幽霊のように廊下を歩く子供たちの後ろ姿に、私たちは同時に、ふふっと声を漏らして笑った。

無料アイスクリームの鋭い冷たさ
お風呂上がり、家族で並んで食べた真っ白なアイス。口の中でゆっくりと溶けていく濃厚な甘さと、火照った体に突き抜ける氷のような冷たさに、一番上の子が「まだ冷たい!」と叫んだ。その心地よい矛盾こそが、この旅の正解だった気がする。

子供の寝息と、遠くで聞こえる列車の音に包まれて、私たちは深い眠りに落ちた。

  • 9階の「紫雲の湯」では、あえて何も話さず、ただ山を眺める静寂の時間を5分だけ作ってみてほしい。
  • 貨物駅の風景を子供と一緒に観察すると、ガイドブックにはない、この街の本当の素顔が見えてくる。