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午前三時の滝の音は、秘密を話すには少しうるさすぎた

午前三時の滝の音は、秘密を話すには少しうるさすぎた

鼻腔を鋭く刺すような冷たい空気が、肺の奥深くまで入り込み、身体の芯を凍らせる。1月の石和温泉は、想像以上に「冬」の顔をしていた。チェックインして最初に身を委ねたロビーのソファ。その絶妙な沈み込み具合に、張り詰めていた緊張がふわりとほどけていく。私たちはそこで、これからこのホテルで何を「検証」するかを、真剣に、そしてかなり適当に話し合った。外の凍てつく世界とは対照的な、暖炉のような温もりに包まれた空間で、私たちの贅沢な作戦会議が始まった。

ホテル甲子園で私たちが挑んだ「冬の検証」リスト

  • 奥庭の静寂に身を委ね、誰が一番長く黙っていられるか競う
県内最大級の奥庭大滝まで歩き、轟々と鳴り響く水の音に意識を集中させたが、結果は惨敗。静寂を極めようとした瞬間、誰かが小さくくしゃみをしたことで緊張の糸が切れ、全員が爆笑。結局、凍える足先を温めるために全力でロビーへ走って戻るという、運動会のような結末になった。
  • ストーンスパで「究極の無」に到達し、精神を浄化する
dōTERRAの精油が濃厚に漂う空間で、八ヶ岳のストーンに背中を預けた。心地よい重みと温もりに包まれ、「意識高い系」の休息を完遂するはずが、気づけば全員が泥のように深い眠りに落ちていた。「ここはどこで、私は誰だっけ?」と一瞬記憶を失うほどの、極めて効率的な意識喪失を体験し、心身ともに完全にリセットされた。
  • 貸切露天風呂「吐竜」で、大人の色気と余裕を演出してみる
モダンな空間で、しっとりと冬の夜風に当たりながら、映画のワンシーンのような静謐な時間を過ごそうとした。しかし、濡れたタイルで誰かが派手に滑った瞬間、大人の余裕は霧散。ただの「騒がしい集団」として40分を使い切ったが、お湯の温度が絶妙に心地よかったため、結果的には大満足の時間となった。
  • 地ワインの芳醇な香りに酔いしれ、人生の深淵について語り合う
山梨のぶどうが凝縮された深い紫色の液体が、舌の上で濃厚に踊る。グラスに結露がつき、指先が冷たくなる頃には、深刻な人生相談はどこかへ消え去っていた。「次は何を注文するか」という、極めて現実的で最優先されるべき議題にすり替わったとき、私たちは旅の本当の快楽に気づいた。

感情のスコアボード:正解は「予定外」の中にあった

振り返れば、この旅のハイライトは、計画していた「癒やし」ではなく、その隙間に落ちた小さな失敗たちだった。特に、露天風呂付客室風林で過ごした時間は、光の屈折のように幻想的だった。室内のプールに身を沈め、水面に映る逆さ富士を眺めていると、外の4.5度という凍てつく世界が、まるで遠い国の出来事のように感じられた。温かい水と冷たい空気の境界線。その曖昧な場所で、私たちは普段は口にしないような、とりとめもない話を交わした。完璧なスケジュールよりも、計画外の寒さに震え、予定外の昼寝に耽ることでしか得られない幸福がある。ホテル甲子園の広大な空間は、私たちのそんな不器用な振る舞いを、静かに、そして寛容に包み込んでくれた。

夜空に溶けていく白い湯気と、遠くで聞こえる冬の風の音。

  • 21時過ぎに流れる奥庭大滝の音を、あえて誰とも喋らずに10分間だけ聴いてみてほしい。
  • 武田神社へ初詣に行くなら、あえて一番寒い時間帯を選び、その後の温泉の温度差に賭けてみるのが正解だ。