札幌駅北口。赤いジャンパーの係員さんを誰が最初に見つけるかという、くだらない賭けを始めた。結果、全員で迷走し、氷点下の風に頬を叩かれながら「誰だよ、右って言ったのは!」と笑い合った。スーツケースがアスファルトを叩く乾いた音が、冬の澄んだ空気に鋭く響き渡っていた。
ビュッフェのプレートに並んだ地元の牛乳。驚くほど濃厚で、舌の上にベルベットのような心地よい重みが残る。外の刺すような冷気と、口いっぱいに広がる熱いスープの温度差に、一瞬だけ感覚が麻痺した。その激しい温度の揺らぎこそが、旅の醍醐味なのだと感じた。
「完璧なプランがある」と自信満々に語っていた友人が、地図を完全に逆さまに持っていた。僕たちはそれを全力で笑い飛ばし、結局は行き当たりばったりで雪道を歩いた。計画通りにいかないことが、この旅における唯一の正解だったのかもしれない。
サウナ後の水風呂。誰が一番長く耐えられるかという、大人のすることとは思えない幼稚な競争が始まった。肌に張り付く水の表面張力が、限界まで張り詰めた瞬間に、誰かが「もう無理!」と情けない叫び声を上げて脱出した。その絶叫が、最高のBGMとなって響いた。
窓の外に広がる定山渓の深い谷。しんしんと雪が降り積もり、世界が純白に塗りつぶされていく。あらゆる音が雪に吸い込まれていくような、圧倒的な静寂。そこには、言葉にする必要のない、心地よい空白が広がっていた。
定山渓万世閣ホテルミリオーネの展望風呂付洋室に身を委ねる。リネンのひんやりした感触が、温泉で火照った肌に心地いい。深夜、消灯した部屋でトイレまで歩くわずか数歩の距離が、まるで静まり返った宇宙を漂っているかのように遠く感じられた。
初詣の帰り道、凍りついた枝に小さな梅の花を見つけた。1月の厳しい寒さの中で、しがみつくように咲いている。その不器用なまでの強さに、なんだか僕たちの旅のあり方が重なって見えて、冷えた胸の奥が少しだけ熱くなった。
ロビーに戻った瞬間、ぬくぬくとした温かい空気が皮膚を優しく包み込んだ。凍えて感覚のなかった指先が、ゆっくりと解けていく。完璧ではないからこそ、誰かの隣にいる体温が、こんなにも贅沢な救いに感じられるのだと思う。
湯気の向こう側で、誰かが笑っていた。
- サウナ後の外気浴はマジで飛ぶから、絶対に体験してほしい。
- 朝食の地元のミルク、濃厚すぎて衝撃的だからぜひ飲んでみて。