3人で1本の傘に押し込まれた。誰が真ん中に来るかで言い争い、結局、私の右肩だけがじっとりと濡れていた。冷たい雨粒が肌に触れるたび、小さく身震いする。河口湖駅から富士河口湖温泉ホテル あさふじまで歩くわずか数分。その短い時間で、私たちはすでに「誰が一番不運か」という不毛な競争に熱を上げていた。
すき焼きの甘辛い香りが、和室の隅々まで濃密に満ちていた。熱い鉄鍋で肉が焼ける「ジュー」という快い音が、空腹を激しく刺激する。地元の山梨の食材が、舌の上でゆっくりと溶けていく。それは、白い画用紙に一滴の濃いインクを落としたときのように、じわじわと幸福感が心に広がっていく感覚だった。
「絶対誰か、靴下左右違うやつ履いてくるって賭けない?」誰かがニヤニヤしながら言い出した。結果、誰も違わなかったけれど、代わりに一人がパジャマを裏返しに着ていた。それを逃さず写真に撮り、グループチャットに流した時の、あの絶望に満ちた顔。ぶっちゃけ、それが今回の旅の最大のハイライトだったかもしれない。
富士山をバックにした「映え写真」を撮ろうとしたけれど、湖畔の風が強すぎて全員の髪が顔に張り付いた。シャッターを切った先には、誰が誰だか分からない、ただの「毛玉の集まり」のような物体が写っていた。私たちはそれを「現代アート」と名付け、腹を抱えて一生分笑い転げた。
畳の上に大の字に寝転がって、ぼんやりと天井を眺める。障子の隙間から、春の夜のひんやりとした空気が静かに忍び込み、頬を撫でた。隣からは、誰かの規則正しい寝息が聞こえてくる。言葉を交わさない、この何でもない沈黙こそが、実は一番贅沢な時間なのだと感じる。
温泉の温度が、芯まで心地よい。指先からゆっくりと体温が戻り、強張っていた心まで解けていく。浴衣の帯が少しきつくて、呼吸をするたびに自分が「旅人」であることを思い出させられた。富士河口湖温泉ホテル あさふじの富士山ビュー和室で、窓の外にそびえる霊峰を眺めながら、足裏に触れる畳の心地よい感触に身を任せた。
翌朝、コンビニで見つけた謎の地元の飲み物を試した。一口飲んだ瞬間、全員が同時に「……え?」という、得体の知れない表情を浮かべた。正解は分からなかったけれど、その不可思議な味が、私たちだけの秘密の共通言語になった。
旅の終わり、私たちは最初よりもずっと、お互いの境界線が曖昧になっていた。個別の点だった記憶が、水に濡れた紙にインクが滲むように、ゆっくりと混ざり合っていく。完璧なスケジュールなんて、最初から必要なかった。ただ一緒に笑い、一緒に困惑していれば、それで十分だった。
窓の外、富士山が淡い青に溶けていた。
- 富士山パノラマロープウェイで、風に吹かれながら絶景を眺めてみて。
- 朝食の鰹節ごはん、地味だけどそれが一番クセになるから試して。