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加湿器の低い音が、呼吸の隙間を埋めていた

加湿器の低い音が、呼吸の隙間を埋めていた

静寂を塗り替える、白い吐息

加湿器:部屋の隅で低く唸る、一定の周波数を持った白いノイズ。指先に伝わるプラスチックの微かな振動と、春の乾燥した肌を優しく撫でる冷たい霧の粒子。淡いインジケーターの光が、薄暗い室内に静かな呼吸のようなリズムを刻んでいる。

不確かな距離を埋めるノイズ

「ねえ、この音、なんだか落ち着かない?」

君が、幅154センチのダブルベッドの端で、清潔な綿シーツのひんやりとした感触を指先でなぞりながら呟いた。

「いいと思うよ。ホワイトノイズみたいなもんだし。寂しさを消してくれる気がする」

私が答えると、君はふっと小さく笑った。パジャマが擦れるカサカサという乾いた音が、加湿器の低いハム音に溶けていく。私たちは付き合い始めてからずっと、お互いの「正解」を探し続けている。言葉を尽くすべきか、それとも沈黙を守るべきか。そんな不確かな距離感を、この部屋の適度な広さが優しく包み込んでいた。

「寂しいって、今、ここに二人でいるのに?」

「うん。隣にいても、どこか遠くにいる感じがすることあるじゃない。でも、今は……ちょうどいいかも」

君が少しだけ私の方へ体を向けたとき、部屋に満ちたのは、心地よい諦めのような安らぎだった。

空白を許容するということ

チェックアウトして、あの部屋を離れた後も、耳の奥にはあの低い唸りが残っていた。私たちはこれまで、お互いの欠落を埋め合わせることでしか繋がれないと思い込んでいたのかもしれない。けれど、ダイワロイネットホテル 神戸三宮PREMIERで過ごした時間は、欠けている部分を無理に埋めるのではなく、その隙間に心地よいノイズを流せばいいのだと教えてくれた気がする。

バスとトイレが分かれたセミセパレートの構造も、不思議と心地よかった。完全に一体であることよりも、ふとした瞬間に一人になれる小さな壁があること。その境界線があるからこそ、再び扉を開けて向き合った時の体温が、より鮮明に、より愛おしく感じられた。現代的な機能美に包まれた空間は、私たちに「個」としての時間と、「二人」としての時間を同時に許容してくれた。

4月の神戸の街は、どこか浮き足立っていた。北野異人館へ向かう坂道を登る時、頬を撫でた風はまだ少し冷たく、けれど春の予感に満ちて甘い。街中の桜が、淡いピンク色のリバーブのように視界を彩っていた。南京町の喧騒の中、私たちはわざと歩幅を緩めた。誰に急かされることもなく、ただ隣にいることの不自由さと自由さを同時に味わっていた。三宮駅に着いてからホテルに辿り着くまで、私が何度も道を間違えたことを「景色のいい寄り道」だと言い張った嘘を、君は全部わかっていたはずだ。それでも君は、私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれた。

もしかすると、私たちはこれからも、正解のない問いを抱えたまま歩き続けるのだろう。でも、あの部屋で共有した「ちょうどいいノイズ」がある限り、沈黙さえも一つの音楽として楽しめる気がする。孤独は消し去るものではなく、二人で一緒に抱えていればいい。そう思えたのは、ダイワロイネットホテル 神戸三宮PREMIERという、適度な距離感を持った空間に身を置いたからかもしれない。私たちは完璧なカップルではないけれど、お互いの周波数を少しずつ合わせていくこの不器用な過程を、今は何よりも愛おしいと感じている。

朝の光が、白いリネンの波にゆっくりと溶け込んでいた。

  • 造幣局の桜の通り抜けを、あえて言葉少なめに歩いてみる。
  • 朝食ビュッフェで体に優しいメニューを選びながら、今日一日の「寄り道」を計画する。