← 回到 神戶蒙特利飯店

小さな指が、私の袖を引いた温度

小さな指が、私の袖を引いた温度

神戸の街とホテルで綴る、五つの記憶の調べ

足裏に心地よく沈み込む、厚手のカーペットの弾力。そこで響いたのは、パジャマ姿の子供が全力で駆け抜ける「トントン」という軽やかな足音だった。白いバスローブをマントのように羽織り、ヨーロッパの古城を冒険する騎士になりきって廊下を疾走する。その不規則なリズムは、予定通りにいかない旅だからこそ味わえる、心地よい乱れのように感じられ、私の心まで弾ませた。

イタリアンレストラン「サンミケーレ」で、銀色のフォークが白い皿に触れた「チリン」という繊細な音。濃厚な赤ワインソースの芳醇な香りが鼻をくすぐり、口の中でほどけるローストビーフの柔らかさに、思わず「本当に美味しいね」と夫と視線を交わした。子供たちがポテトを奪い合って賑やかに笑い合う喧騒さえも、温かなシャンデリアの光に溶けて、かけがえのない家族の記憶へと刻まれていく。

客室フロアのセキュリティ扉が「ピッ」と短く鳴り、解錠される音。ひんやりとしたプラスチックのカードキーをかざした瞬間、街の喧騒から切り離された自分たちだけの聖域に戻ってきた安心感が、凝り固まった肩の力をふっと解いてくれる。重厚なドアが静かに閉まる音は、今日という一日を無事に完走したことを告げる、優しく、そして絶対的な安心感に満ちた合図のように聞こえた。

十月の神戸、三宮の街を歩いている時に聞こえた、乾いた落ち葉が靴底で「カサッ」と鳴る音。生田神社へ向かう道すがら、秋の澄んだ冷たい風が頬を撫で、どこからか漂うお香の香りが心を落ち着かせてくれる。子供が不意に私の袖をぎゅっと掴んだとき、その小さな手の体温が冷えた指先にじんわりと伝わり、「お母さん、見て!」という弾んだ声と共に、名前のない静かな幸福感が胸いっぱいに広がった。

ホテルモントリーベ神戸の大浴場で、お湯が大きく跳ねる「バシャッ」という重厚な音。白い湯気に包まれた空間で、四十度を少し超えたお湯が、歩き疲れたふくらはぎの緊張をゆっくりと溶かしていく。隣で子供が水しぶきを上げてはしゃぐ歓声をBGMに、ただぼーっと天井を見上げる時間は、家族というチームで一日を戦い抜いた私たちへの、最高に贅沢なご褒美だった。

隣で浅い眠りに落ちた子供の、規則正しい寝息だけがツインルームの静寂に満ちている。

  • 徒歩圏内の生田神社へ。秋の澄んだ空気の中で、子供と一緒に静かに手を合わせる時間を。
  • レストラン「サンミケーレ」での食事を。お腹いっぱい食べた後の、心地よい眠気までをセットで楽しんで。