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14階から見たお城は、小さなおもちゃみたいだった

14階から見たお城は、小さなおもちゃみたいだった

黄金色の朝光と、ジャムに染まった小さな指先

エレベーターが静かに上昇するたび、耳の奥でかすかに圧力が変わり、日常から切り離されていく感覚に包まれる。その心地よい浮遊感に気づいたとき、私たちはKOKO HOTEL Premier 熊本の14階に辿り着いていた。窓の外には、朝の柔らかな光を浴びて凛と佇む熊本城が、まるで街の守護神のように鎮座している。その特権的な景色を背に、私たちの朝食は始まった。大人が深く焙煎されたコーヒーの苦い香りに心を落ち着かせている傍らで、次男は目の前のパンケーキに全神経を集中させていた。小さな指先が真っ赤なストロベリージャムで汚れ、それが真っ白なテーブルクロスに点々と、まるで抽象画のように広がっていく。「あ、汚れちゃった」と誰かが呟くけれど、不思議と溜息は出なかった。むしろ、その不完全な汚れさえも、この旅という物語の大切な栞のように思えて、胸の奥が温かくなる。整然としたホテルの静寂の中に、子供たちの弾けるような笑い声という「不揃いなノイズ」が混ざり合う。その不協和音こそが、私たちが今、家族としてここに生きているという、何よりも確かな手触りだった。

五月の湿り気と、ベンチで分かち合った黄金色の記憶

ホテルを後にし、サクラマチの賑わいの中へと踏み出すと、五月特有のしっとりとした風が頬を撫でた。空気には藤の花の甘い香りと、若葉の青い匂いが混ざり合い、視界を埋め尽くす新緑が目に眩しい。もともとの計画では、歴史ある城下町の風情を優雅に散策し、知的な時間を過ごすはずだった。けれど、旅の神様はいつもいたずらだ。長女が「もう一歩も歩けない」と道端で座り込み、次男はどこからともなく現れた鳩を追いかけて全力疾走を始める。チームとしての作戦はあっけなく崩壊したが、そのときふと、「正解の旅」を追い求めることに疲れていた自分に気づいた。私たちは近くのベンチに腰を下ろし、地元の馬刺しコロッケを買い込んだ。熱々の衣が指に張り付き、一口かじれば、じゅわっと濃厚な肉の旨味が口いっぱいに広がる。豪華なレストランのフルコースではないけれど、外の風に吹かれながら食べる揚げ物の味は、なぜか記憶の深い場所に刻み込まれる。口の周りを油っぽくしながら、「また食べたい!」と笑い合う子供たちの顔。計画通りにいかないもどかしさが、いつの間にか「想定外の発見」という喜びに変わっていく。そんな不自由さこそが、旅の本当の贅沢なのだと感じた。

シモンズの海に沈み、深夜に分かち合う密やかな甘味

夜、部屋に戻ると、豪華特大床房に備えられたシモンズ製ベッドの深い沈み込みが、一日中張り詰めていた心身をゆっくりと解きほぐしてくれた。まるで穏やかな海に身を任せているかのような心地よさだ。お風呂上がりの子供たちは、パジャマ姿でベッドの上を跳ね回り、部屋の中は一時的に小さな戦場のような騒ぎに包まれた。けれど、嵐のような時間はやがて過ぎ、静寂が訪れる。子供たちが深い眠りに落ち、規則正しい寝息だけが部屋を満たした頃、夫婦でこっそりとコンビニで買った地元のプリンを分かち合った。冷たいスプーンが舌に触れ、濃厚なキャラメルの甘さが喉を通っていく。部屋の隅では加湿空気清浄機が静かに唸りを上げ、窓の外からは遠くの車の走行音が、心地よい子守唄のようにかすかに聞こえてくる。昼間の喧騒が嘘のように、今はただ、この静謐な時間がある。誰にも邪魔されない、けれど隣に大切な誰かがいるという絶対的な安心感。完璧なスケジュールを完遂することよりも、こうして一日の終わりに、ごちゃごちゃした余韻をゆっくりと味わうことの方が、ずっと贅沢な気がする。私たちは視線を合わせ、言葉もなく、ただ小さく笑い合った。

裸足で踏んだフローリングの冷たさと、子供の温かい寝息。

  • 熊本城のライトアップを眺めながら、KOKO HOTEL Premier 熊本の14階ラウンジで静かに夜を過ごしてほしい
  • サクラマチにある地元の菓子店で、見たこともない色合いの和菓子を一つだけ選んで、旅の思い出にするのがおすすめ