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カップルの呼吸が聞こえる距離で

16:00、カーテンの裾から滲む光

午後四時を過ぎた頃、カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の床に不思議な模様を描いていた。外はまだ明るいのに、この部屋だけが薄暗く沈んでいる。窓を開けると、冷たい空気が頬を撫でた。草津の12月は乾燥していて、息を吐くと白い湯気が一瞬だけ浮かぶ。

隣の部屋であなたが靴を脱ぐ音がした。厚いカーペットが足音を吸い込むように、静寂が部屋を包む。その静けさが心地よかった。都会の喧噪とは違う、この静かなぬくもり。

「あ、もうイルミネーション始まってる?」とあなたが呟いた。外に出てみると、街灯が点り始めたばかりなのに、すでにいくつかの木が光の輪で飾られていた。まだ点灯式前なのに、まるで誰かが先回りして準備していたみたいに。

部屋に戻ると、檜の香りがしていた。あの独特の甘い木の匂いが、湿度の低い空気と混ざって、部屋中に広がっていた。檜の香りは、時間をゆっくりにする魔法のようなものだった。


23:00、湯気が煙のように漂う

風呂場の扉を開けた瞬間、湯気が部屋中に広がった。熱いお湯が張られた貸切風呂から立ち上る湯気は、まるで生き物のように部屋を這っていた。あなたは裸足でタイルを踏みしめ、浴槽の縁に手をついて確かめた。

「 nuovissimoだな」

そう言って笑ったあなたの声が、湯気でくぐもったように聞こえた。実際のところ、湯加減はちょうどよかった。表面は熱いけれど、深く潜れば体が包まれるようなぬくもり。檜の木の風呂桶に浸かって、目を閉じると、時間が止まったみたいだった。

食事の時間もそうだった。個室で出された料理は、どれも温かみがあって、量もちょうどよかった。白舞茸の天ぷらはサクサクと衣が口の中で崩れ、岩魚のお造りは新鮮で、プリンはとろけるように甘かった。ご飯は魚沼産で、柔らかめに炊かれていた。

「これ、明日の朝食でも食べたいな」

そう言ってあなたが箸を置いたとき、部屋に静寂が降りた。風呂場から聞こえる水の音、あなたの呼吸、そして遠くで時計がカチカチと時を刻む音。


風呂から上がって布団に入ったら、ふとんは温かくて、体の芯までじんわりと温まった。隣であなたが寝息を立て始めるころ、外ではイルミネーションが点滅していた。

00:00、新年の予感

時計が真夜中を知らせるころ、部屋の時計がカチリと鳴った。その音が余韻を残すように、部屋中に響いた。外ではまだイルミネーションが点り続けていて、その光が窓越しに差し込んで、床に色とりどりの模様を描いていた。

あなたの寝息が聞こえる。小さく、規則正しい。まるで海の波のよう。時計の音とあなたの呼吸が、この部屋だけの時間を刻んでいる。

ひょっとしたら、カップルがこうして静かに過ごす時間が、一年の中で一番贅沢な瞬間なのかもしれない。イルミネーションもクリスマスもカウントダウンも、全部そのぬくもりに比べたら二の次だった。

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