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靴下が乾くまでの時間

五つの物が見ていた我々の馬鹿げた瞬間

靴下

靴下は、朝起きたときまだ湿っていた。昨日の雪が靴にしみ込んで、足が冷たかったからだ。部屋の暖房を入れても、靴下はなかなか乾かなかった。でもその時間が、なんだか落ち着いた。指先で触れると、生地の繊維が少しざらついていて、乾きかけの湿り気が残っていた。まるで草津の朝が、ゆっくりと靴下に染み込んでいくようだった。

温泉の木製ベンチ

温泉のベンチは、誰かの体重で少しへこんでいた。浴室の床は冷たいけれど、ベンチは暖かかった。足をついて、温泉の湯気が顔をくすぐる。湯気は白く、まるで森の奥から立ち上る霧のようだった。誰かが「あ、今日も気持ちいいな」とつぶやいた。その声に、みんなの肩の力が抜けたのがわかった。

草津ナウリゾートホテルの館内マップ

マップには、レストランや温泉の場所が印刷されていた。でも実際に歩いてみると、北側の入り口から入って右手にある食堂が一番美味しそうな匂いをしていた。パンを焼く焦げ目と、味噌汁の旨味が混ざり合った匂いは、まるで森の朝食を思わせた。誰かが「この匂い、草津に来たって実感するよね」と呟いた。

足湯の石

足湯の石は、誰かが踏んで滑り止めとして使っていた。触ると、温泉の熱が伝わってきた。足の裏がじんわりと温まる感覚は、それだけで贅沢な時間だった。石の表面は滑らかで、まるで長い年月をかけて磨かれた森の命のようだった。誰かが「この石、温泉の熱を蓄えてるんだな」とつぶやくと、みんなで足を競い合った。

ロビーのソファ

ソファは、三人で占領していた。誰かが寝転んで、足を投げ出していた。テレビはつけっぱなしで、ニュース番組が流れていた。でも誰も見ていなかった。ソファのクッションは柔らかく、体が沈み込む感覚が心地よかった。窓の外では、草津の森が静かに揺れていた。誰かが「今日はいつもより空気が美味しい気がする」とつぶやいた。


もしもこいつらが口を開けば

こいつらは、我々が馬鹿げたことをしたのを見ていた。

靴下が乾くまでの時間を惜しまず、温泉に何度も浸かったこと。
ベンチのへこみ具合から、誰が一番先に湯船に飛び込んだか、声だけでわかったこと。
マップを信じず、鼻で匂いを嗅いでレストランを選んだこと。
足湯の石の温度を競い合ったこと。
そして、ソファで横になったまま、三時間も話し込んでしまったこと。

こいつらは、我々が友達で良かったと思っていた。

「このホテルの空気、まるで森の心臓部のようだね」
誰かがそう言うと、みんなで笑った。

靴下が乾くころには、外はもう暗くなっていた。

  • 草津ナウリゾートホテルの客室で、靴下を干すスペースを確保しておくと、乾きやすい。
  • 足湯で足を温めた後、温泉に浸かると、体の芯まで温まる。