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靴下の片方が、ベッドの下で眠っていた

靴下の片方が、ベッドの下で眠っていた

08:00, 凛とした空気と朝の喧騒

裸足で踏み出したフロアタイルの、ひんやりとした硬い感触が足裏から突き抜け、眠っていた意識を鮮やかに覚醒させる。時計の針はすでに8時を回っていたが、私たちの準備はまだ半分だ。「桜がもう咲いているかも!」と、上の子はまだ少し厚手のコートをぎゅっと握りしめ、期待に胸を膨らませて玄関先でぴょんぴょんと跳ねている。一方の下の子は、なぜか右足にだけ靴下を履いたまま、もう片方をどこにやったのか分からず、不思議そうな顔で自分の足を見つめていた。そんな心地よい混乱の真っ只中にあっても、ホテルエムズ・プラス四条大宮の部屋に漂う、洗いたてのリネンの清潔な香りが、不思議と私の心を凪の状態に戻してくれる。旅の朝というのは、いつも予定通りにいかない。けれど、その「ずれ」こそが旅の正体であり、醍醐味なのだと感じる。私たちは急いで荷物をまとめ、大宮駅へと向かう。外に出れば、3月の京都の空気はまだ鋭く、頬を刺すように冷たい。けれど、その凛とした冷たさが心地よく、これから始まる一日の輪郭をくっきりと描き出していた。

14:00, 白い静寂に抱かれる休息

肩に深く食い込むリュックのストラップの重みと、心地よい疲労感が全身を包み込む。嵐山の竹林を歩き、押し寄せる人混みをかき分け、子供たちの「あっちに行きたい!」という予測不能なリクエストに全力で応え続けた午後の終わり。ツインルームのドアを開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、一切のノイズを削ぎ落としたような、真っ白で清廉な空間だった。この四角い避難所に入った途端、外の世界の喧騒がふっと遠のき、意識が浄化されていく。子供たちは、自分たちのサイズよりもずっと大きなホテルのスリッパに足を踏み入れ、パタパタとペンギンのような歩き方で部屋の中を駆け回っている。その滑稽で愛らしい姿に、張り詰めていた緊張が解け、つい小さく笑みが漏れた。ベッドに深く体を沈めると、適度な反発力が優しく背中を押し返し、強張っていた筋肉がゆっくりとほどけていく。完璧なスケジュールをこなすことよりも、こうして一時的に「何者でもない時間」に戻れる場所があることが、親にとっての本当の贅沢なのかもしれない。淡い色の壁が、私たちの疲れを静かに吸収してくれるような気がした。

19:00, 甘い香りと家族のささやき

指先に残る、みたらし団子のねっとりとした甘い温度と香ばしい醤油の香り。ホテルに戻る途中の路地裏で見つけた小さなお店で買ったもので、子供たちはそれを頬張りながら、今日見た景色について途切れ途切れに、けれど熱っぽく話していた。部屋の照明を少し落とすと、空間に柔らかい陰影が生まれ、心地よい密室感が漂い始める。二人で一つのベッドに潜り込み、今日撮った写真を見返す時間。上の子が「あの鳥、変な顔してたね」とクスクス笑い、下の子がそれに合わせて声を上げて笑う。そんな些細なやり取りが、静寂という名の器の中で心地よく響いていた。京都の街は歴史と伝統に満ちていて圧倒されるけれど、この部屋にいるときだけは、ただの「家族」という小さな単位に戻れる。特別な観光地を巡ることよりも、こうして狭いベッドの中で肩を寄せ合い、今日一日の「失敗」を笑い飛ばせる瞬間にこそ、旅の本当の価値がある。明日こそは、靴下を両方履いて出発できるだろうか。そんなどうでもいい心配をしながら、私たちはゆっくりと夜の準備を始めた。

22:00, 静寂が教えてくれる自由

子供たちの規則正しい寝息が、部屋の空気に溶け込んでいる。ついさっきまで嵐のように暴れていたのが嘘のように、今は小さな塊となって深い眠りに落ちている。ようやく訪れた、大人だけの贅沢な時間。冷たい水で顔を洗い、鏡の中に映る、少し疲れたけれど満足そうな自分たちの顔を見つめる。Hotel M's PLUS SHIJO OMIYAの静寂は、単なる音の不在ではなく、ベルベットのような心地よい質感を持っている。冷蔵庫が発する低いハムmingが、かえってこの部屋の静けさを強調し、心を落ち着かせてくれた。パートナーと隣り合い、明日行く場所について、あえて計画を立てずに話し合う。「もしかしたら、明日はどこにも行かずに、ただ近所のカフェでゆっくりコーヒーを飲むだけになるかもしれないね」。それでいいのだと思えた。子供と一緒に旅をするということは、自分のコントロールを放棄し、流れに身を任せることだ。その不自由さが、実は一番の自由だったのかもしれない。ふとベッドの下を覗くと、あの日失くしたはずの靴下が、ひっそりと丸まって眠っていた。それを拾い上げ、明日への小さなお守りのように枕元に置いた。

窓の外では、春を待つ京都の街が静かに呼吸をしていた。

  • 阪急大宮駅や嵐電四条大宮駅から至近のため、お子様が歩き疲れた際もすぐに部屋に戻れる安心感があります。
  • 5歳以下のお子様は添い寝無料となっており、家族での滞在コストを抑えつつ、清潔感溢れる空間を堪能できます。