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真夜中の空腹は、誰が言い出したものだったか

8月の苗栗は、空気が水分を抱えすぎていて、呼吸をするたびに肺がしっとりと濡れるような、重たい湿度に包まれている。苗栗馥藝金鬱金香酒店の自動ドアが開いた瞬間、外のねっとりとした熱気を切り裂くように、鋭い冷気が肌に張り付いた。ロビーに足を踏み入れると、そこには場違いなほど豪華なクリスタルシャンデリアが吊るされ、磨き上げられた大理石の床が、冷たく、どこか突き放すような光を放っていた。隅に静かに佇むヴィンテージのBMWが、訪れる者の視線を誘う。私たちはその気品に圧倒されるどころか、「こんなに洗練された空間で、全力でダラダラすることこそが最高の贅沢ではないか」という、旅先ならではの結論に達した。結局、誰が言い出したのかも定かではないが、私たちは抗えない空腹に突き動かされ、夜食を求めて再び外へ出た。雨上がりのアスファルトから立ち上がる、あの独特の土っぽい匂い。地元の名店でテイクアウトしたワントンのプラスチック袋が指先に食い込む感触と、中から漂う生姜と油の混ざった濃厚な香りが、今の私たちにとっての唯一の正解だった。

贅沢なリネンに散らばる、プラスチックの宴

「ねえ、見てよこの部屋。広々としたベッドが二つもあるのに、ここでワントンを食べるなんて、完全に貴族の没落じゃない?」

ベッドに大の字に寝転んだ友人が、呆れたように笑いながら言った。私たちは、ふかふかの白いリネンの上に、遠慮なくプラスチックの容器を並べた。パチン、という蓋が開く軽い音が、静まり返った部屋に心地よく響く。湯気がふわっと上がり、部屋の中に安っぽいけれど抗えない食欲をそそる匂いが広がった。

「いいじゃん。このギャップが最高なんだよ。見て、このテレビ、回転してこっちを向くんだよ? こんなハイテクな部屋で、地元のB級グルメを啜る快感。あ、醤油足りない。誰か取って」

「自分で取りなよ。っていうか、あなたさっき『ダイエットする』って言いながら、一番大きいサイズのセット頼んでたよね?」

「それは、旅のカロリーはゼロになるっていう都市伝説を信じてるから。それより、このワントンの皮の薄さ、やばくない? 飲み物みたいに喉を通るんだけど」

私たちは、互いの食いしん坊なところを笑い合いながら、温かいスープを啜った。豪華な壁紙や洗練されたインテリアなんて、もう視界に入っていない。ただ、目の前の容器から立ち昇る湯気と、くだらない会話だけが、この空間の密度を上げていた。もし私たちが、もっと「正解」な旅のプランを立てて、高級なレストランで静かに食事をしていたら、こんなふうに笑い転げることはなかっただろう。不便さや計画のなさこそが、私たちを一番自然な状態に戻してくれる。そういう気がした。

胃袋が満たされた後の、心地よい沈黙

容器の中身が空になり、最後の一滴までスープを飲み干した頃、部屋には心地よい疲労感と、少しの気だるさが漂っていた。誰かが小さくあくびをし、もう一人が枕に深く顔を埋める。会話は自然と途切れ、代わりに聞こえてきたのは、部屋の隅にある冷蔵庫の低いハム音と、遠くで鳴っている車の走行音だけだった。窓の外に目を向けると、向かいの竹南運動公園が深い闇に溶け込んでいる。昼間は子供たちの歓声で溢れていたであろう万坪の緑が、今はただ静かに、夜の湿気を吸い込んでいる。その暗闇を見つめていると、自分たちの存在がとても小さく、同時にとても自由であるように感じられた。足りないものがあるからこそ、今ここにある充足感が際立つ。私たちは、無理に言葉を重ねる必要はないことを知っていた。ただ隣に誰かがいて、同じ温度の空気を吸っている。その事実だけで、十分すぎるほど満たされていた。

サイドテーブルのランプを消すと、カーテンの隙間から、苗栗の夜が静かに流れ込んできた。

  • 地元の名店「江技旧記」のワントンをテイクアウトし、部屋でゆっくり味わう時間
  • 早朝、まだ誰もいない竹南運動公園を、裸足に近い感覚で散歩すること